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現代美術

2022年5月 5日 (木)

牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児・・・遠い記憶を呼び覚ます風景

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大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』279回

百花繚乱、花の匂い漂う紫躑躅咲く道を歩いて美術館に行く。春愁のかぎりを躑躅燃えにけり。
過酷な運命を乗り越えた画家。遠い記憶を呼び覚ます風景。
藤田龍児の絵は、広い野原、山の見える郊外、古い街並み、田舎町。電信柱、工場の煙突、鉄道、バス停。白い犬とエノコログサ、蛇行する道は人生の苦難の象徴。白い犬は、画家自身の分身、藝術家を守る守護精霊である。
過酷な運命を乗り越えた画家。啓蟄。羽音を立て、エノコログサが穂を天に伸ばす。画家の蘇りの光景か、春の兆しの神秘的な光景。白い犬を連れた人物が歩いている。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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戦争による事業破産と半身不随、二人の運命
藤田龍児は、48歳の時、脳血栓で倒れ、53歳で再起する。アンドレ・ボーシャンは、出征、戦争で破産、妻は精神病、園芸業から画家となる。
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【藤田龍児、48歳の時、脳血栓、画家を断念、53歳で再起、74歳で死す】
藤田龍児は、昭和3年1928年に京都で生まれ、同志社中学校卒業、同志社工業専門学校中退。大阪市立美術館の附属施設であった市立美術研究所にて石膏デッサンや油彩を学び、1959年、美術文化展に初入選。同協会の会員になり、毎年出品を続けた。1959年、大阪大学医学部附属石橋分院で作業療法指導員となる。1969年、退職。初期の作品は不定形な形象が混じり合う抽象画、シュルレアリスムの影響がある。1976年、48歳の時、脳血栓にて倒れる。翌年再発、手術で一命をとりとめるが、右半身付随。利き腕が使えなくなったことに失望、画家として生きることを断念、絵の大半を処分した。絵筆を左手に持ち替え、再び絵画を描くようになる。再起後の最初の個展を開いた時、53歳となる。
白い犬とエノコログサ、蛇行する道など絵画に何度も登場するモチーフで、犬に藤田自身を、そして蛇行する道には彼の苦難の人生を感じさせる。病気を乗り越えた藤田にとって、何度踏まれても逞しく伸びていくエノコログサは、強い生命力の象徴である。白い犬は土佐犬、画家自身、
【アンドレ・ボーシャン、出征、戦争で破産、妻は精神病、園芸業から画家へ、1958年85歳で死す】
アンドレ・ボーシャンは、1873年フランス中部のシャトー=ルノーに生まれた。苗木職人として園芸業を営む。1914年、第一次世界大戦が勃発、歩兵連隊に徴集され、軍隊で学んだ事が、測量したデータをもとに、地形を正確に記録する測地術である。そして大戦が終結して46歳にて除隊するが、農園は荒れ果て破産、妻は精神に異常をきたす。ボーシャンは地元の森の中で新居を構え、妻の世話をしながら自給自足生活を送る。
ボーシャンが絵を初めた契機は、軍隊時代に学んだ測地術の技法にあった。山や川などの故郷の風景、咲き誇る花々といった苗木職人として身近に接した植物などを描く。1921年、サロン・ドートンヌに入選。当時の同賞の審査は比較的厳しくなかった、50歳を前に画家の道を歩みはじめる。建築家となりル・コルビジェに認められる。1928年、セルゲイ・ディアギレフからロシアバレエ団の舞台美術を依頼される。
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展示作品の一部
藤田龍児『於能碁呂草』1966年 星野画廊
藤田龍児『啓蟄』1986年 星野画廊
藤田龍児『静かなる町』1997年 松岡真智子氏
藤田龍児『オーイ、野良犬ヤーイ』1984年 個人蔵
藤田龍児『特急列車』1988年 平澤久男氏
藤田龍児『老木は残った』1985年 北川洋氏
アンドレ・ボーシャン『ラトゥイル親爺の店』1926年 個人蔵
アンドレ・ボーシャン『大木とアルゴ船乗組員』1928年 個人蔵
アンドレ・ボーシャン『ラヴァルダン城とスイカズラ』1929年 個人蔵 
アンドレ・ボーシャン『婚約者の紹介』1929年 個人蔵
アンドレ・ボーシャン『花瓶の花』 1928年 個人蔵
アンドレ・ボーシャン『窓』 1944年 個人蔵 
アンドレ・ボーシャン『川辺の花瓶の花』1946年 個人蔵
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参考文献
プレスリリース東京ステーションギャラリー、冨田章氏
「牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児」東京美術2022

牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児・・・遠い記憶を呼び覚ます風景

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アンドレ・ボーシャン(1873-1958)と藤田龍児(1928-2002)は、ヨーロッパと日本、20世紀前半と後半、というように活躍した地域も時代も異なりますが、共に牧歌的で楽園のような風景を、自然への愛情を込めて描き出しました。人と自然が調和して暮らす世界への憧憬に満ちた彼らの作品は、色や形を愛で、描かれた世界に浸るという、絵を見ることの喜びを思い起こさせてくれます。両者の代表作を含む計116点を展示します。
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition.html
2人の画家アンドレ・ボーシャンと藤田龍児は、活動した国も時代も異なりますが、いくつかの興味深い共通点をもっています。
ともに50歳頃に新たな画家の道に踏み出したこと、精妙な輝きを秘めた色彩を用いて故郷の山河など牧歌的で楽園を思わせる風景を好んで描いたこと、そしてそれらが彼らの決して安逸ではなかった困難な生活の中で生み出されたこと。
そんな彼らの作品が、じわじわ効いてきて、しみじみ沁みる。「見る」ことの喜びを感じさせてくれる展覧会です。
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牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児
2022年4月16日(土) - 7月10日(日)

2021年12月25日 (土)

「ユージーン・スタジオ 新しい海」・・・善悪の荒野、善悪の彼岸

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大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』264回

【善悪の荒野】この作品を見ると哲学書を思い出す。古代ギリシアの哲学者の詩編。真言密教の書。
『善悪の彼岸』を思い出す。善悪の彼岸にあるのは、何か。善悪の彼岸にあるのは愛である。生命を生み出すものは根源的な愛である。
【愛と憎しみの彼方】憎しみの彼方にあるのは何か。永劫回帰の彼方にあるのは何か。生成消滅の宇宙円環、魂の宇宙円環の彼方にあるのは何か。永劫回帰の彼方にあるものは何か。智慧である。エンペドクレス『自然』『浄化』。
【不滅の愛】不滅の愛は何か。滅びない愛とは何か。永く続く愛は何か。最も長く続く愛は、報われない愛である。美への憧れ、エロスである。運命の人にめぐり会う。プラトン『饗宴』
【美の彼方】美の海原の彼方にあるのは何か。魂の美である。【美の階梯を登る方法】美の階梯がある。美の階梯は、どう昇るのか。魂の美の階梯。プラトン『饗宴』
【生死の彼岸】菩薩、菩提心をもつ者は、生死を超えて修行僧となり、智慧に到達する。生死の彼岸、智慧に到達するものは如来である。【人智を超えた存在】大日如来に到達する道は、金剛界曼荼羅、胎蔵界曼荼羅に描かれている。
【愛染明王真言】大愛染尊よ 金剛仏頂尊よ 金剛薩埵よ 衆生を四種に摂取したまえ)oM ma hA raga vajro SHI Sa va jra satva jaH+jaH hUM vaM hoH
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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【善悪の彼岸】愛からなされることは、いつも善悪の彼岸でおこる。『善悪の彼岸』第4章「箴言と間奏曲」153。
怪物と戦う者は、自ら怪物にならぬよう用心したほうがいい。あなたが長く深淵を覗いていると、深淵もまたあなたを覗き込む。『善悪の彼岸』146
大海のなかで渇き死にするというのは、恐るべきことだ。ところでお前らも、真理がもはや決して――渇きを癒すことがないほどに、お前らの真理を塩辛くしようとするのか?『善悪の彼岸』
「善と悪は無い。考えがそれを作るのだ」There is nothing either good or bad, but thinking makes it so.『ハムレット』第2幕第2場
「人生のさかりには、無理と思われるものもすべて叶い、覚束(おぼつか)なく見えるものもすべて成るのだよ。」三島由紀夫
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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展示作品の一部
《善悪の荒野》(2017)
《善悪の荒野》(2017)はガラス張りで仕切られた空間に、風化し、破壊され朽ち果てた家具が並ぶ作品。スタンリー・キューブリック監督『2001年宇宙の旅』(1968)に触発された本作は、映画終盤のシーンに現れる、人智を超えた存在であるモノリスに主人公が導かれる部屋を原寸大で再現、破壊、焼失させたオブジェで構成されたインスタレーション。
「廃墟や遺産もまた、どこかに存在し続ける」。作家は現代社会において地続きのものとしての「どこか」である未来について想起させること意図している。
映画の終盤に現れる部屋を原寸大で再現し、破壊・消失させたオブジェで構成したインスタレーション。寒川は2017年当時、人類誕生以前と未来を描いた映画の物語を破壊することで、人々の未来を再度想起させるきっかけを与えようとしたという。
《ゴールドレイン》(2019)
暗がりのなか、金箔と銀箔の粒子が上から降り注ぐ《ゴールドレイン》(2019)は、鑑賞者に重力や時間についての思考をうながす作品。連綿と可変し続けるその運動は、より壮大な時間を見るものを想起させる。
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ユージーン・スタジオ《善悪の荒野》(2017)
ユージーン・スタジオ《ゴールドレイン》(2019)
ユージーン・スタジオ 《海庭》(2021)
ユージーン・スタジオ《あるスポーツ史家の部屋と夢 #連弾》(2014)
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参考文献
『ユージーン・スタジオ 新しい海 EUGENE STUDIO After the rainbow』東京都現代美術館、2021
プレスリリース
理念を探求する精神、エンペドクレス・・・古代ギリシアの理想、知恵、勇気、節制、正義は、なぜ失われたのか
https://bit.ly/3sIf3RW

「ユージーン・スタジオ 新しい海」・・・善悪の荒野、善悪の彼岸
https://bit.ly/3suGTmE
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EUGENE STUDIO(ユージーン・スタジオ)は寒川裕人(1989年アメリカ生まれ)による日本を拠点とするアーティストスタジオで、平成生まれの作家としては当館初となる個展です。
「89+」展(2014年、サーペンタイン・ギャラリー、ロンドン)における作品提供や、個展「THE EUGENE Studio 1/2 Century later.」(2017年、資生堂ギャラリー)、「資生堂ギャラリー100周年記念展」(2018-2019年)や「de-sport」展(2020年、金沢21世紀美術館)への参加など、国内外の作品発表において高い評価を得ています。さらに、アメリカを代表する現代SF小説家ケン・リュウとの共同制作、完全な暗闇で能のインスタレーション「漆黒能」(2019年、国立新美術館)、2021年にはアメリカで発表した短編映画がパンアフリカン映画祭などのアカデミー賞公認の国際映画祭のオフィシャルセレクションに選出されるなど、自由な発想の幅広い活躍に国際的な注目が集まっています。
本展覧会は、平面作品から大型インスタレーション、映像作品、彫刻作品等で構成され、代表作〈ホワイトペインティング〉シリーズ(2017年-)や《善悪の荒野》(2017年)から最新作までを一堂に会し、ユージーン・スタジオの多岐にわたる活動に通底する視点や発想、哲学を紐解くものです。個人的な関心から美術史、過去の事象や文明などの主題を並列に昇華させた作品群は、単なる二次元的なヴィジョンではなく、社会の環境や循環の中で生きる私達の存在を起ち上がらせます。歴史の転換点ともいうべき現在、批判や皮肉から立脚する表現ではなく、現実を見据えて未来へと漕ぎ出すための叡智を喚起させる作品群をぜひご高覧ください。
東京都現代美術館
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/the-eugene-studio
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ユージーン・スタジオ 新しい海 EUGENE STUDIO After the rainbow
会期:2021年11月20日~2022年2月23日
会場:東京都現代美術館 企画展示室地下2階

2020年12月21日 (月)

石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか・・・果てしなき創造の旅

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大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』230回

藝術家は、果てしない創造の旅に出る。藝術家は創造力を磨き、新世界を創る。創造の秘密は何か。理念を失った世界で判断基準は何か。美の基準は何か。哲学者は、知恵と愛と美を磨き、魂の美を探求する。
石岡瑛子は「時のない、独創性、革命的、神秘、出会い」。Tameless,Originality,Revolutinally、この言葉をマントラのごとく唱える。Mystery。Collaboration、石岡瑛子の創造と行動の指針である。ターセム・シン監督『落下の王国』は、壮大な愛と復讐の叙事詩が華麗に展開する。石岡瑛子が到達した最高の作品である。フェデリコ・フェリーニFederico Fellini:Satylicon,Amarcorcoが到達した至高の境地である。
藝術家は、創造力を磨き、新世界を創る。哲学者は、知恵と愛と美を磨き、魂の美を探求する。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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石岡瑛子 代表作、デザイン、衣装デザイン
石岡瑛子(1938-2012)。東京藝術大学卒業後、資生堂に入社。1966年に前田美波里を起用した「BEAUTY CAKE」のポスターで一躍注目を集め活躍を始める。
ポスター『西洋は東洋を着こなせるか』(パルコ、1979年)アートディレクション
映画『ミシマ―ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』(ポール・シュレイダー監督、1985年)プロダクションデザイン Mishima コピーライトZoetrope Corp. 2000. All Rights Reserved. / コピーライトSukita
フランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカスが総指揮を執った三島由紀夫をモチーフにした作品『ミシマ─ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』(コッポラ作品は「地獄の黙示録」の日本版ポスター)でカンヌ国際映画祭芸術貢献賞を受賞する。
映画『ドラキュラ』(フランシス・F・コッポラ監督、1992年)衣装デザイン。コピーライトDavid Seidner / International Center of Photography
フランシス・F・コッポラ監督『ドラキュラ』1992の衣装デザインで、石岡はアカデミー賞に輝く。
『石岡瑛子 風姿花伝 EIKO by EIKO』初版1983年。この本を愛読するターセム・シン監督が、石岡瑛子に衣装デザインを依頼する。『ザ・セル』The Cell (2000)
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愛と復讐の叙事詩
映画『落下の王国』(ターセム・シン監督、2006年)衣装デザイン。コピーライト2006 Googly Films, LLC. All Rights Reserved.
Tarsem Singh,The fall.2006
左腕を骨折して入院中の5歳の少女アレクサンドリアは、脚を骨折してベッドに横たわる青年ロイと出会う。彼は彼女にアレキサンダー大王の物語を聞かせ、翌日も病室に来るようささやく。再びアレクサンドリアがロイのもとを訪れると、彼は総督と6人の男たちが織り成す壮大な叙事詩を語り始める。世界各地の世界遺産で撮影、構想24年撮影4年、CGを一切使わない映像美を追求、世界的CMディレクター、ターセム・シン監督、映画『落下の王国』に遺憾なく表現されている。
『落下の王国』は、オレンジの木から落下した少女と自殺志願のスタントマンが病院で出会い語る、アレクサンドロス大王の冒険と総督と戦う6人の勇者の物語。壮大な愛と復讐の叙事詩が、美しく華麗な世界で、華やかに展開する。
映画『白雪姫と鏡の女王』(ターセム・シン監督、2012年)衣装デザイン、コピーライト2012-2020 UV RML NL Assets LLC. All Rights Reserved.
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私の夢が叶いますように 長い創造の旅を続けている感覚
高校生の頃に制作された絵本には、「えこ」という女の子が世界に羽ばたいていく物語が描かれている。──世界中を旅して、美味しいものを食べて。私の夢が叶いますように!」
石岡瑛子は亡くなる前年のインタビューにて「仕事をしているというよりは、ずっと長い創造の旅を続けている感覚」と答えている。
【石岡瑛子】Tameless,Originality,Revolutinally。マントラのごとく唱える。Mystery。Collaborationもキーワード。石岡瑛子は、鏡であり、Mystery。自己と他が一体化する傾向がある。河尻亨一。
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参考文献
河尻亨一×藪前知子、対談、東京都現代美術館
河尻亨一『TIMELESS 石岡瑛子とその時代』(朝日新聞出版)2020

石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか・・・果てしなき創造の旅

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石岡瑛子 1983年/ポートレート 撮影:ロバート・メイプルソープ
Eiko Ishioka Photo by Robert Mapplethorpe, 1983 コピーライトRobert Mapplethorpe Foundation
Tarsem Singh,The fall.2006 コピーライト2006 Googly Films, LLC. All Rights Reserved.
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★石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか、東京都現代美術館(企画展示室1F、B1F)
2020年11月14日(土)~2021年2月14日(日)
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/eiko-ishioka/

2020年8月 1日 (土)

STARS展、現代美術のスターたち、森美術館 ・・・資本主義史上最大の感染爆発、混迷する人類、救済する智慧はどこにあるか

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大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第221回
夏の午後、六本木ヒルズ、森美術館に行く。
【神の怒り】人類史をみると人の密集した都市文明は異常である*。神々は、カネと地位に執着する人間たちに天罰を下す。
人格なき学識(Knowledge without Character)、道徳なき商業(Commerce wihtout Morality)、人間性なき科学(Science without Humanity)は人間を滅ぼす。「マスコミは無知な大衆をだますことが仕事である」TV局社長。文明は死を超えて、利益を追求する。BC8000年、農耕牧畜が始まり、人獣共通感染症が出現。家鴨と豚を一緒に飼うことによって出現した。森林を伐採して農地を作り、そこに大量の肥料をまき文明が栄えた。BC4000年シュメールに都市文明が誕生、階級社会が生まれ、宗教と藝術と学問が生まれた。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
――
時間の庭のひとりごと
100年に一度の感染爆発の危機にあって、現代美術のスターたちは、大衆をだます詐欺師か、天から舞い降りた創造者か。
私は、ひとり糸杉の森で、天災人災を調伏するため、大日如来、愛染明王に祈りをささげ、真言を唱える。
杉本博司《時間の庭のひとりごと》2020年は、人の少ない海と森のなかで人間が生きることの意味を考えさせる。杉本博司72歳の映像作品。
地球上で起こるすべての環境破壊は、人間の欲望によって生まれた。近代資本主義が築いた文明が無に帰すとき、人間が理想とすべき、生きかたの形、偉大な人類の精神が現れる。
アクロポリスのパルテノン神殿は、古代人の理想を刻む。現代人は、古代文化の精神に思いを馳せ憧れる。廃墟になっても美しい、人の心を打つ藝術を創造することが、真の藝術家の使命である。
現代美術のスターたちは、大衆をだます詐欺師か、天から舞い降りた創造者か。
【如意輪観音菩薩】「真実を語る人は黙殺される。虚偽を語り、人をだます者が尊重される鬼畜競争社会」「天から降りた天人はこの世の守銭奴に苦しめられる」「六道輪廻、天人は、餓鬼道の人間に虐められる。天人は、如意輪観音に救われる。六観音の教え。大報恩寺」
人生で、よい師と出逢うことは、重要なことだ。しかし、よき師に出逢うことは困難である。求めて出逢うことは、まれである。【ミケランジェロとロレンツォ】1489年メディチ家ロレンツォがギルランダイオを介して、ミケランジャロと出会う。1490年から1492年メディチ家が創設したプラトン・アカデミーに参加。ミケランジェロ藝術の原点。
【本質をみる学問】古代ギリシアの学問は、現象を捉えるだけの表面的な学問でなく根本的に知性を磨き教養を養い、精神的な価値を考えさせる学問。パルメニデス、ヘラクレイトス、エンペドクレス、ソクラテス、プラトン。哲学者の思想の回廊に刻まれた美しい日々。プラトン哲学の奥義を究めた。
【人口削減計画】ゼウスは、増え過ぎた人口を調節するためにテミスと試案を重ね、大戦を起こして人類の大半を死に至らしめる決意をした。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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展示作品の一部
杉本博司《時間に庭のひとりごと》2020年、映像作品
杉本博司《シロクマ》1976年
村上 隆《Ko²ちゃん(プロジェクトKo²)》1997年
奈良美智《Voyage of the Moon (Resting Moon) / Voyage of the Moon》2006年
李禹煥《関係項》1969/1982年
草間弥生《ピンクボート》1992
宮島達男《Sea of Time '98》1998年
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参考文献
【人口削減計画】ゼウスは、増え過ぎた人口を調節するためにテミスと試案を重ね、大戦を起こして人類の大半を死に至らしめる決意をした。
https://bit.ly/2XoaNcd
感染爆発、帝国と都市国家の戦い。この世の果てを超えて、旅する詩人・・・「時の関節が外れた」シェイクスピア
https://bit.ly/2XoaNcd
世界の果てへの旅:The World's End ・・・理念を探求する旅人
https://bit.ly/2WylxmE
ウィルスと人類の戦い・・・感染爆発の歴史、アテネのペリクレス、ルネサンス、厩戸皇子 、盧舎那仏
https://bit.ly/2z32Orl
「愛染明王像」康円作、鎌倉時代13世紀。京都神護寺から東京国立博物館に寄託。
「大日如来坐像」運慶作、鎌倉時代12世紀、栃木、光得寺
「密教彫刻の世界」東京国立博物館・・・愛染明王、金剛薩埵の化身
https://bit.ly/2WNIoNt

STARS展、現代美術のスターたち、森美術館 ・・・資本主義史上最大の感染爆発、混迷する人類、救済する智慧はどこにあるか
https://bit.ly/30g3TY4
――
ガンジー『魂のことば』『七つの社会的罪』(Seven Social Sins)
理念なき政治(Politics without Principles)
労働なき富(Wealth without Work)
良心なき快楽(Pleasure without Conscience)
人格なき学識(Knowledge without Character)
道徳なき商業(Commerce wihtout Morality)
人間性なき科学(Science without Humanity)
献身なき信仰(Worship without Sacrifice)
(長谷川真理子)「人類史でみると人の密集した都市文明は異常である」
――
STARS展、現代美術のスターたち、日本から世界へ、森美術館、2020.7.31(金)~ 2021.1.3(日)
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/stars/

2019年9月26日 (木)

「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」・・・現代アート高騰の秘密

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大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』192回
晩夏の午後、美術館に行く。
ジャン=ミシェル・バスキアは、ニューヨークで生まれ、彗星のごとく一世を風靡して、10年間活動し3000点のドローイングと1000点以上の絵画作品を残して、病気で27歳で亡くなった。*(Jean-Michel Basquiat、1960年12月22日—1988年8月12日)。バスキアは、アンディ・ウォーホル1928年8月6日—1987年2月22日)に憧れていた。バスキアは、初期は怒りを表現していたといわれる。バスキアは、何を表現しているのか。
――
現代藝術作品の価値と価格
藝術作品の価値は、どこにあるのか。作品の価値と価格とは異なる。画家バスキアは、なぜ評価されるのか。現代アート高騰の裏には、どのようなカラクリがあるのか。ジェフ・クイーンズの作品は、リアルさと情熱があるといわれる。バスキア作品は、圧倒する存在感があるという人がある。ZOZO前社長、前澤友作氏所蔵バスキア「無題」は123億円でサザビーズで落札された。
何を以って成功とするのか。人生の成功は地位と金であるとほとんどの人は考える。努力と才能で人生を切り開くのは至難である。人生を成功に導くのは、何か。地位と金ととコネか。
――
現代美術高騰の魔術
藝術においても、成功は資本とカラクリによって作られる。そこには多数の詐欺師が存在して関与する。トマ・ピケティ『21世紀の資本』は、格差拡大の要因として「r>g」を示した。「R(資本収益率)>G(経済成長率)」、一部の階層が莫大な資産を独占し、格差が生じている。一部の階層が受け継いだ資産を元にして成功を独占している。「弁護士と知識人は、80%が詐欺師だ」(A.Kruger)。
「アメリカでは、ギャラリー経営者や評論家、コレクターたちが協力して有望なアーティストを発掘し市場価値を引き上げるシステムが構築されていて、そこに世界の投機マネーが流れ込んでいる」*1。「弁護士と知識人は、8割が詐欺師だ」(A.Kruger)。
――
藝術家と思想家
現代藝術家の存在、生き方、考え、精神、言語力、ライオフスタイル、人脈、財力、どこに価値があるのか。「イケムラ・レイコ展」国立新美術館、「クリスチャン・ボルタンスキー ―Lifetime」国立新美術館、「塩田千春展:魂がふるえる」森美術館、これら展覧会を見たが、迷う。どこに価値があるのか。現代美術作家が表現するのは何か。
何を以って成功とするのか。人生の成功は地位と金であるとほとんどの人は考える。努力と才能で人生を切り開くのは至難の業である。
思想家において、思想は、この敵意に満ちた奇妙な世界と我々の間を取り次ぐ、魔術である。敵との闘争における武器である。思想家は人生の戦いにどう挑み、逆襲するのか。美のイデアのための戦いである。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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展示作品の一部
ジャン=ミシェル・バスキア「オニオン・ガム」1983年
ジャン=ミシェル・バスキア「フーイー」1982年 高知県立美術館蔵
ジャン=ミシェル・バスキア「炭素/酸素」1984年
ジャン=ミシェル・バスキア「温度」1982年
ジャン=ミシェル・バスキア「無題」1985年 世田谷美術館蔵
ジャン=ミシェル・バスキア「プラスティックのサックス」1984年
ジャン=ミシェル・バスキア「無題」前澤友作氏所蔵
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参考文献
「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」 ディーター・ブッフハート (編集)、グルーヴィジョンズ (その他)
*1「ウサギの彫刻」に100億円!? 現代アート高騰の舞台裏
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4332/index.html
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1980年代のアートシーンに、彗星のごとく現れたジャン=ミシェル・バスキア。
わずか10年の活動期間に、新たな具象表現的な要素を採り入れた2,000点を超すドローイングと1,000点以上の絵画作品を残しました。その作品は、彼自身の短い人生を物語るかのように、非常に強烈なエネルギーであふれているだけでなく、20世紀のモダニズム美術の流れを踏まえ、ジャズやヒップホップ、アフリカの民俗や人種問題など、黒人画家ならではの主題を扱っています。そのため、没後ますます名声が上昇し、今や20世紀美術最大の巨匠の一人として確固たる地位を占めるにいたりました。
本展では、バスキア研究の世界的権威ディーター・ブッフハート氏が、こうしたバスキアと日本との多方面にわたる絆、そして日本の豊かな歴史や文化がその創作に及ぼした知られざる影響を明らかにします。世界各地から集めた約130点の絵画やオブジェ、ドローイングで構成された、日本オリジナルで、日本初となる本格的な展覧会です。
https://macg.roppongihills.com/jp/news/2019/04/2193/
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「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」、森アーツセンターギャラリー、9月21日(土)~11月17日(日)

2017年6月22日 (木)

ジャコメッティ展・・・「夕日の影」の思い出

Giacometti2017Ombra_della_sera大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
ジャコメッティの細長い彫刻を見ると、2千年前のエトルリアの彫刻、「夕日の影」を思い出す。二千年の時の流れを超えるものは何か。
トスカーナを旅した日々。ピサ、フィレンツェ、サン・ジミニャーノ、シエナ、オルヴィエート、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ。エトルリアの彫刻「夕日の影」(ヴォルテッラ)には、孤独な人間の姿がある。
ジャコメッティは、エトルリアの彫刻から影響を受けていない。ジャコメッティは、独自に1945年から有名な細長い彫刻を生みだす。ジャコメッティが手に入れたまったく新しい彫刻の形。「人間の本質に迫る、虚飾を一切取り払って極端に細くなった像」。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
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永遠を旅する哲学者、時を超え、黄昏の丘を超えて、美へ旅する。
マエストロ究極の夢は何か。
美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。
美しい魂は、輝く天の仕事をなす。美しい女神が舞い下りる。美しい守護精霊が、あなたを救う。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保 正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
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「夕日の影」ヴォルテッラ、トスカーナの思い出
エトルリア文明と20世紀文明、二千年の時の流れを超えるものは何か。
「オンブラ・デッラ・セーラ」(夕刻の影)紀元前3世紀、銅製。(ヴォルテッラ、グアルナッチ・エトルリア博物館)。夕日の影は、少年の像のようである。
「夕日の影」(Ombra della Sera)と名付けたのは、詩人ダヌンツィオである。男性の裸体、57、5センチの高さ。ミケランジェロ家が所有していた記録がある。紀元前5~1世紀作の石棺、骨壺など埋葬品多数展示(グアルナッチ・エトルリア博物館)。
ジャコメッティ彫刻「ヴェネツィアの女」「立つ女」に似ている。ヴェネツィアの女の立ち姿の夕日の陰のようである。
ヴィスコンティ『熊座の淡き星影』Vaghe stelle dell'orsa
ヴォルテッラVolterraはヴィスコンティの映画『熊座の淡き星影』の舞台の町である。ギリシア悲劇ソポクレス『エレクトラ』が原型である。ニューヨークに行く途中故郷ヴォルテッラに立ち寄る。女優クラウディア・カルディナ-レが、颯爽とスポ-ツカ-に乗ってエトルリア門前に登場する。かつてはピアニストで今は病む母親、姉弟の近親相姦、燃え尽きる小説「熊座の淡き星影」。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
★参考文献
『エトルリア文明 古代イタリアの支配者たち』知の再発見双書
『ヴィスコンティ集成 退廃の美しさに彩られた孤独の肖像』1994
http://www.villasensano.it/blog/the-bronze-symbol-of-volterra/
国立新美術館『ジャコメッティ展図録』2017
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アルベルト・ジャコメッティの軌跡
Alberto Giacometti, (1901年10月10日 - 1966年1月11日)。1901年スイスに生まれる。1922年、20歳でパリに出たジャコメッティ。ルーヴル美術館で見た古代エジプトやエトルリア美術、民俗学博物館で出会ったアフリカやオセアニア彫刻の造形から影響を受ける。1930年、ジャコメッティの作品を見たサルバドール・ダリとアンドレ・ブルトンにシュルレアリスム運動に誘われ、シュルレアリスム展に参加。1933年の父の死後、頭部を作り始めるようになり、1934にはシュルレアリスムと決別。1935年、ジャコメッティはモデルに基づく彫刻を試みる。小さな像の時代。1945年からジャコメッティの代表作といえる細長い彫刻を作り始める。女性立像、歩く男、指差す男、倒れる男、群像。ジャコメッティ展、
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
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展示作品の一部
アルベルト・ジャコメッティ「歩く男Ⅰ」1960年、ブロンズ、183 × 26 × 95.5 cm、マルグリット&エメ・マーグ財団美術館、サン=ポール・ド・ヴァンス
「ヴェネツィアの女Ⅰ」1956年 、ブロンズ 、106 × 13.5 × 29.5 cm、マルグリット&エメ・マーグ財団美術館、サン=ポール・ド・ヴァンス
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★「ジャコメッティ展」国立新美術館、6月14日から9月4日まで
国立新美術館にて2017年6月14日(水)から9月4日(月)まで
豊田市美術館 2017.10.14(土)- 12.24(日)
http://www.nact.jp/
http://www.tbs.co.jp/giacometti2017/

2017年1月18日 (水)

孤高の画家、長谷川潔 大地の果てへの旅

Hasegawa_alexandre_19301951大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
孤高の画家、長谷川潔 大地の果てへの旅
時の止まった静謐な空間。幻想的な典雅な世界。南欧の美しい風景。「黒には七色ある」と語る黒を極めた画家。
孫崎享氏の家でみた長谷川潔『森陰の道』(油彩)。昏い森陰の道のかなたに碧空がみえる。憂愁の彼方に理想がみえる。画家の心象風景。長谷川潔『ヴォルクスの村』油彩(1930)の時代の作品だろうか。この時代、画家はトレドに旅している。荒寥たる大地の果てになにをみたのか。岡鹿之助の静謐な美の世界を感じる。孤高の画家、孤高の旅人、長谷川潔。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
http://platonacademy.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-02f4.html
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長谷川 潔(1891年- 1980年)
1913年(大正2年)に文芸同人誌『仮面』に参加。表紙や口絵を木版画で製作。日夏耿之介、堀口大學の本の装幀も担当した。日夏耿之介『転身の頌歌』『黒衣聖母』『黄眠帖』3冊の詩集が限定330部で制作された(第一書房)。
後年、1925年、『月下の一群』(堀口大学訳詩集)表紙(1925 木口木版)『日夏耿之介定本詩集』表紙・エキスリブリス(1925)が出版された。
1918年(大正7年)、銅版画技法習得のため渡仏。1919年4月4日にパリに到着するが、静養のため10月から南フランスに約三年間滞在。
1924年 デュフィの勧めで独立画家・版画家協会に入会。マニエール・ノワールを研究。
1926年 サロン・ドートンヌ版画部門の会員となる。
1934年「マルキシャンヌの村(東ピレネーの村)」(1934 ポアント・セーシュ)
1980年、89歳で死す。
★長谷川潔の油絵作品
1920年代後半から30年代にかけて制作された。
長谷川潔「マルキシャンヌ」油絵
http://nagai-garou.com/contents/3f/2928
長谷川潔、油彩画「修道院の古塔(ラグラス)
http://cardiac.exblog.jp/d2012-02-02/
長谷川潔、油彩「トレド」8号1929
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★長谷川潔、マニエール・ノワール
「アレキサンドル三世橋とフランスの飛行船」1930
「摩天楼上空のポアン・ダンテロガシオン号」1930
★岡鹿之助『遊蝶花』1951
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『京都国立近代美術館所蔵[長谷川潔作品集]』光村推古書院2003
「生誕100年記念 長谷川潔展」京都国立近代美術館( 1991 )
「生誕120年記念 長谷川潔展」横浜美術館2011年

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