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2026年2月

2026年2月27日 (金)

「歌仙 在原業平と伊勢物語」・・・恋多き青年歌人、運命の平城天皇の第5皇子、在原業平の運命

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大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第421回

在原業平(825~ 880)は、平城天皇の第5皇子。平城天皇は、嵯峨天皇に譲位するが、平城上皇の乱を起こす。平城上皇による国家反逆罪である。運命の人、在原業平の冒険。
【平城上皇の乱】譲位した平城上皇が太政官人半ばを率いて平城旧京に遷り、寵妃・藤原薬子とその兄仲成に擁せられ朝政に干渉した。天皇は巨勢野足・藤原冬嗣を蔵人頭に補するなどによって対抗。弘仁元年(810)九月、上皇の平城遷都の命を機として坂上田村麻呂以下の兵を派遣、上皇方を制圧した。上皇は入道、薬子は自殺、仲成は射殺、皇太子高丘親王は廃され、阿保親王・藤原真夏らは左遷。高丘親王は空海によって僧となり天竺へと旅立つ。澁澤龍彦『高丘親王航海記』。【平城上皇の乱810、弘仁・貞観の治、文化の華】弘仁・天長・承和の約三十年間、嵯峨天皇(上皇)の権威と指導のもとに太平が続き、空海・小野岑守・同篁・良岑安世らの人材が輩出。【平安時代600年の平和の基礎は嵯峨天皇により築かれた】
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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■展示作品の一部
重要文化財 三十六歌仙図額 在原業平像  1面 岩佐又兵衛筆 江戸時代・寛永17年(1640) 仙波東照宮蔵 (埼玉県立歴史と民俗の博物館寄託)⋆
重要文化財 蔦の細道図屏風 深江芦舟筆 6曲1隻 江戸時代・18世紀
 東京国立博物館蔵(Image:TNM Image Archives)[展示期間:2/21 ~ 3/7]
伊勢物語図色紙 第82段1「渚の院の桜」 伝俵屋宗達筆 1幅 江戸時代・17世紀 個人蔵

【岩佐又兵衛(1578-1650)は、織田信長に謀反した戦国武将、有岡城主、荒木村重の末子】母方の姓を名乗り、数奇な運命をたどり絵師として活躍した。重要文化財「弄玉仙図」、桐木のもとで簫をふく弄玉は妖艶である。又兵衛の母の面影である。母、荒木村重の妻は、有岡城の戦い(天正7年1579年)で敗れ信長軍に処刑された。「百二十二人の女房一度に悲しみ叫ぶ声、天にも響くばかりにて、見る人目もくれ心も消えて、感涙押さえ難し。これを見る人は、二十日三十日の間はその面影身に添いて忘れやらざる由にて候なり。」『信長公記』。

⋆岩佐又兵衛(1578-1650)「山中常盤物語絵巻」は、奥州へ下った牛若を訪ねて、都を旅立った母の常盤御前が、山中の宿で盗賊に殺され、牛若がその仇を討つ物語、これには岩佐又兵衛の体験が滲んでいる。
「筆魂 線の引力・色の魔力─又兵衛から北斎・国芳まで─」・・・画狂老人卍『鳳凰図屏風』の思い出
https://bit.ly/3sfpb35
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歌仙在原業平と伊勢物語
1,歌仙在原業平
10世紀初頭に成立した最初の勅撰和歌集『古今和歌集』の仮名序で、「ちかき世にその名きこえたる人」として六人の歌人すなわち六歌仙があげられていますが、業平はそのうちの一人です。その六人とは、在原業平、僧正遍照、喜撰法師、大友黒主、文屋康秀、小野小町。ここでは館蔵品で今回初公開の押絵おしえ六歌仙帖が展示されます。
2,伊勢物語の成立
『伊勢物語』は、業平の和歌による歌物語ですが、業平が生きた時代に最も近い『古今和歌集』には、伊勢物語の中でも重要な章段で登場する話が多くあります。ここでは当館で所蔵する『古今和歌集』、『後撰和歌集』、『拾遺抄』などの古い和歌集で業平に関する部分が展示されます。
古今和歌集 上・下 2冊 烏丸光広筆 江戸時代・17世紀 三井記念美術館
3,伊勢物語の展開
近世以降、伊勢物語の受容層を増加させるきっかけとなったのが、いわゆる「嵯峨本」と呼ばれる豪華な版本の存在です。本展で展示される大東急記念文庫所蔵本は、雲母刷の表紙、色替わりの料紙を交えた、写本のような美しい作品です。
菱川師宣が絵を手掛けた『新版伊勢物語頭書抄』など、当代の人気絵師が関与した例や、版本の伊勢物語を文章・書風に至るまで忠実にパロディ化した『仁勢物語』(大東急記念文庫蔵)なども展示されます。
■展示室6 伊勢物語の名所
伊勢物語にゆかりのある名所や、伊勢物語にちなんだ名所が日本の各所にあります。ここでは江戸時代の大工頭中井家に伝わった絵図を関連の写真とともに展示します。このほか各地の名所を写真で紹介します。
展示室7 伊勢物語の意匠化と芸能化
1,留守模様とデザイン化
留守模様るすもようとは、登場人物を描かず、その物語を象徴するモチーフや、和歌や詩の一部の文字を散らして暗示する表現方法です。色絵竜田川図向付は、尾形乾山の作で紅葉と流水を大胆にデザインした色絵陶磁器です。伊勢物語からの発想とすれば、第106段「龍田川」の留守模様です。
――
プレスリリースより
https://www.mitsui-museum.jp/
平安時代前期に活躍した在原業平(825~ 880)は、天皇の孫で和歌に優れた貴公子として知られます。その「歌仙」として、また「恋多き歌人」としての人物像は、彼の和歌にくわえ、『伊勢物語』の主人公に仮託されることで拡散していきました。
2025年は、業平の生誕1200年にあたります。これにちなみ、現在でも人気が高い業平と『伊勢物語』を題材に生み出された絵画・工芸・茶道具等の作品を集め、そのイメージの広がりの豊かさと、造形の魅力を探ります。加えて、和歌の典拠の一つとされる『古今和歌集』や、近世における普及の一端を担った版本・絵入本などの典籍を通じて、『伊勢物語』の成立と普及の過程についても展示いたします。
⿎展示構成
展示構成は以下のように展示室ごとのテーマで展示いたします。
展示室1:ダイジェスト伊勢物語
展示室2:伊賀耳付花入 銘業平
展示室3:如庵 「能の業平」
 展示室4:絵画化された伊勢物語
 展示室5:歌仙在原業平と伊勢物語
  1,歌仙在原業平  2,伊勢物語の成立  3,伊勢物語の展開
 展示室6:伊勢物語の名所
 展示室7:伊勢物語の意匠化と芸能化
  1,留守模様とデザイン化  2,伊勢物語の芸能化
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■展示室1 ダイジェスト伊勢物語
全125段からなる伊勢物語の中から一般的にもよく知られた章段を15選び、各章段ごとに絵巻・色紙・かるた・合貝あわせがい・茶道具などで具象化された伊勢物語の世界が紹介されます。
重要文化財 三十六歌仙図額 在原業平像  1面 岩佐又兵衛筆 江戸時代・寛永17年(1640) 仙波東照宮蔵 (埼玉県立歴史と民俗の博物館寄託)
重要文化財 伊勢物語絵巻 第4段「西の対」部分 1巻 鎌倉時代・13 ~ 14世紀 和泉市久保惣記念美術館蔵[展示期間:2/21 ~ 3/15]
伊勢物語芥川・武蔵野の図扇面 1面 江戸時代・17世紀 和泉市久保惣記念美術館蔵
展示室2 伊賀耳付花入 銘業平
この花入は、『大正名器鑑』編纂の折に、関東にあった伊賀花入の名作5点が集められ「東あずま五人男」と呼ばれたうちの一つです。益田家から永坂町三井家八代三井高泰(号泰山)に伝わり、その後室町三井家十二代三井高大に譲られて、「業平」と銘が付けられました。
全体に変形(デフォルメ)が強く、無造作な耳が付き、自然釉が織りなす景色は、古伊賀花入の特徴で、千利休の弟子七哲の一人にあげられる古田織部(1544ー1615)の好みが反映されているとされます。利休的な規格を破った「破格の美」といわれ、利休亡きあとの茶の湯界をリードしました。
伊賀耳付花入 銘業平 1口 桃山時代・16 ~ 17世紀 三井記念美術館蔵
■展示室3 如庵 「能の業平」
如庵写しの茶室ケースでは、床に浮田一蕙うきたいっけい筆の武蔵野図を掛け、その前に重要文化財の能面中将(金剛頼勝作)を展示し、その傍らに能道具の冠り物(初冠ういこうぶり)と、折り畳んだ紫地業平菱模様長絹むらさきじなりひらびしもようちょうけんを展示します。
■展示室4 絵画化された伊勢物語
伊勢絵いせえ、すなわち伊勢物語を描いた絵の歴史は古く、かの『源氏物語』「絵合えあわせ」の帖にも登場することが知られています。ただし、それら平安時代のものは既に失われたとみられ、今日に伝存する作品はいずれも、鎌倉時代以降のものです。本章では中世の貴重な作品から、宗達そうたつに連なる尾形光琳おがたこうりんら、琳派の画家による美麗な伊勢絵に至るまで、様々な作品が紹介されます。
伊勢物語図色紙 第69段「君や来し」 1枚 南北朝~室町時代・ 14 ~ 15世紀  香雪美術館蔵 [展示期間:3/17 ~ 4/5]
重要文化財 蔦の細道図屏風 深江芦舟筆 6曲1隻 江戸時代・18世紀
 東京国立博物館蔵(Image:TNM Image Archives)[展示期間:2/21 ~ 3/7]
伊勢物語図色紙 第82段1「渚の院の桜」 伝俵屋宗達筆 1幅 江戸時代・17世紀 個人蔵
このほか、いわゆる「宗達色紙」の伊勢絵や、尾形光琳の「業平東下り図」 (五島美術館蔵) [展示期間:2/21~3/15]、また酒井抱一、鈴木其一、中村芳中といった宗達・光琳の画風に私淑した画家の作品などが展示されます。
■展示室5 
また、江戸時代における着物のデザイン集ともいえる雛形本ひながたぼんですが、当館には約80冊余りの雛形本があり、今回そのなかから伊勢物語に関するデザインのあるものが12冊初公開されます。
色絵竜田川図向付 5客 尾形乾山作 江戸時代・18世紀 大和文華館蔵
2,伊勢物語の芸能化
伊勢物語は芸能の世界でも採り上げられています。中将(鼻まがり)(図22)、小面こおもて(花の小面)、孫次郎まごじろう(ヲモカゲ)(図23)の名物面3面のほか、伊勢物語に関連する能装束、謡本、能絵かるたなど、能の世界での関係作品が展示されます。
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参考文献
「歌仙 在原業平と伊勢物語」・・・恋多き青年歌人、運命の平城天皇の第5皇子、在原業平の運命
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2026/02/post-21a6c8.html
【城上皇の乱、810年】
「旧嵯峨御所大覚寺―百花繚乱 御所ゆかりの絵画」・・・嵯峨天皇と空海、運命の美女
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2025/01/post-075dfa.html
「筆魂 線の引力・色の魔力─又兵衛から北斎・国芳まで─」・・・画狂老人卍『鳳凰図屏風』の思い出
https://bit.ly/3sfpb35
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「開館20周年特別展 生誕1200年 歌仙 在原業平と伊勢物語」三井記念美術館、2月21日~4月5日

2026年2月24日 (火)

トワイライト、新版画 ―小林清親から川瀬巴水まで・・・黄昏と闇の陰影、光線画、清親、井上安治、巴水、沈みゆく世界

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大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第420回

最後の浮世絵師の一人、小林清親、黄昏や闇の陰影を描く「光線画」で席巻した、小林清親(1847-1915)の情趣は井上安治(1864-1889、26歳で死す)「東京真画名所図」に受け継がれた。開化期の物質文明の物質主義を嫌い、黄昏時の闇、夜の闇を好み、沈みゆく世界を愛した。
明治末に浮世絵復興を目指した渡辺省三郎の新版画の風景版画、吉田博「東京拾二題」、伊藤深水「近江八景」、川瀬巴水「東京十二題」に引き継がれた。浮世絵と写真の影響関係もあり、ベアトと絵師の影響を検証する。伊藤深水は、鏑木清方に、美人画を描くよう導かれる。
ボストン美術館日本美術コレクション、スミソニアン国立アジア美術館、最も日本美術コレクションを所有するのはどこか。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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プレスリリース
最後の浮世絵師のひとりと呼ばれる小林清親が1876(明治9)年に開始した『東京名所図』は、明治期の風景版画へ大きな変革をもたらした。黄昏どきの表情や闇にきらめく光の様相を描いた作品群は「光線画」と呼ばれ、深い陰影により江戸の情緒まで捉えている。このような視点は、失われゆく江戸の面影を惜しむ人々の感傷や、それらを記録しようとする写真の意欲とも重なっており、同時代の浮世絵師たちが文明開化により変貌していく都市を、鮮やかな色彩によって楽天的に捉えた開化絵とは一線を画するものであった。明治末期に浮世絵の復興を目指した新版画は、その技術ばかりでなく清親らが画面に留めようとした情趣を引き継いで、新しい日本の風景を発見していった。清親から吉田博・川瀬巴水らに至る風景版画の流れを、スミソニアン国立アジア美術館のミュラー・コレクションによって辿る。
https://mimt.jp/
https://mimt.jp/ex_sp/shin-hanga/
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■展示作品の一部
小林 清親《東京新大橋雨中図》明治9(1876)年 スミソニアン国立アジア美術館 National Museum of Asian Art, Smithsonian Institution, Robert O.Muller Collection
井上 安治《銀座商店夜景》明治15(1882)年 スミソニアン国立アジア美術館 
井上 安治《東京真画名所図 鹿鳴館》明治14-明治22(1881-1889)年 スミソニアン国立アジア美術館
川瀬 巴水《東京十二題 深川上の橋》大正9(1920)年 スミソニアン国立アジア美術館 版元:渡邊木版美術画舗
川瀬巴水《春之雪(京之清水)》1932年(昭和7) スミソニアン国立アジア美術館蔵
川瀬 巴水《東京十二題 五月雨ふる山王》大正8(1919)年 スミソニアン国立アジア美術館  版元:渡邊木版美術画舗
作者不詳《亀戸の藤》明治23(1890年)年頃 スミソニアン国立アジア美術館 
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参考文献
トワイライト、新版画 ―小林清親から川瀬巴水まで・・・黄昏と闇の陰影、光線画、清親、井上安治、巴水、沈みゆく世界
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2026/02/post-fd73a3.html
没後70年 吉田博展・・・月光の桜、光る海 2021
https://bit.ly/2L3sYAL
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★★★★★
「トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで」展、三菱一号館美術館
2026年2月19日(木)~5月24日(日) 
三菱一号館美術館、千代田区丸の内2-6-2
https://mimt.jp/
観覧料金 当日一般2,300円ほか 
休館日 月曜日(祝日・振休は開館)
※開館記念日の4月6日、トークフリーデー[2月23日、3月30日、4月27日]、5月18日は開館

2026年2月21日 (土)

モネ没後100年 クロード・モネ —風景への問いかけ・・・ル・アーヴルからの旅立ち

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大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第419回
クロード・モネ —、ル・アーヴルからの旅立ち、パリ、アルジャントゥイユ、ヴェトゥイユ、ジヴェルニー、終焉の地。

クロード・モネ(1840–1926)は、86年の生涯にわたって旅を続けた。【セーヌ川の旅】ル・アーヴルからの旅立ち、パリ、アルジャントゥイユ、ヴェトゥイユ、ジヴェルニーの庭へ。『アルジャントゥイユのレガッタ』1872。『睡蓮の池、緑のハーモニー』1899.ル・アーヴルで、風景画家ウジェーヌ・ヴ―ダンと出会い、海と空を描くことを学んだ。34歳で友人たちと「印象派展」と後に呼ばれる会を作った。モネ『印象、日の出』1872マルモッタン美術館。
【海辺の旅】エトルタ、『かささぎ』1868-69、ベリール島、『嵐、ベリールの海岸』1886。【ヨーロッパの旅】『オランダのチューリップ畑』1886、『ルーアン大聖堂、扉口とサン・ロマン塔、陽光』1893、『ウォータールー橋、ロンドン』1902『ロンドン国会議事堂』1904、『黄昏、ヴェネツィア』1908、モーパッサン「(モネは)画家というより狩人」。至る所へ旅して主題を探した。
クロード・モネ(1840–1926)86年の旅で求めたものは何か。亡き妻カミーユとジャンの失われた愛、絵画の革命家マネとの友情だろうか。【失われた愛】を求めて【ジヴェルニーの庭】に43年間、愛を注いだ。最悪の人カミーユ。
クロード・モネ『散歩、日傘をさす女』1875年。1875年、モネが34歳の時に描いた。描かれているのはモネの最初の妻カミーユとその長男ジャン。ジャンは当時5歳。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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【ジヴェルニーの庭】1879年、カミーユ32歳で死す。1883年春、42歳のモネ、フランス北部ノルマンディー地方セーヌ川流域のジヴェルニーに移り住む。43歳から、1926年86歳で死ぬまで、43年間、ジヴェルニーの庭を描き続ける。
【モネの謎】【モネ1840-1926】1884年以後、人物画を描かなくなったのは何故か。印象派展、止めたのは何故か。晩年の画風が抽象絵画なのは何故か。
【ゴッホ1823-1890】ひまわりを沢山描いたのは何故か。耳切事件1888は何故か。糸杉1889、描いたのは何故か。ピストル事件は何故か。『種まく人』『アルルの跳ね橋』『夜のカフェテラス』『ひまわり』『収穫』『夕日を背に種まく人』1888アルル、『星月夜』『糸杉』サンレミ1889、『夜のプロヴァンスの糸杉と田舎道』『烏の群れ飛ぶ麦畑』オーヴェール=シュル=オワーズ1890。
【モネの謎 カミーユ】クロード・モネ(1840年11月14日 – 1926年12月5日)86歳で死す。1879年、カミーユは32歳で死去。モネ《死の床のカミーユ》1879年 オルセー美術館蔵。最悪の人カミーユ、その人柄を知ることができないのは何故か。
『クロード・モネ —風景への問いかけ』』図録、p122。『印象、日の出」1872、「散歩、日傘」1879、すべてカミーユの生きている時代である。
【マネとモネ】【1863年エドゥアール・マネ「草上の昼食」事件」】
エドゥアール・マネ『水浴(のちに『草上の昼食』に改題)』、モネ「草上の昼食」1865-66、により、改題。1863年にナポレオンの指揮で開催された「落選者展」で起きた。エドゥアール・マネ⦅草上の昼食⦆1863年 オルセー美術館蔵、中産階級の男二人と裸体の娼婦がピクニックをしている。ジョルジョーネ「テンペスト」「草上の合奏」の影響がある。ここで事件が起きた原因は「現実世界の女性の裸体を描いたから」。当時はこれがタブー中のタブー。女性の裸体を描いていいのは「宗教画・寓意画(ギリシャ神話など)」に限られていた。「古典主義に一石を投じた」【1865年モネ、サロンで入選】モネは、サロンで見事に入選を果たす。1865年『オンフルールのセーヌ河口』、1866年『緑衣の女』で入選。マネ1865年『オランピア』でサロンに入選。1869年、1870年は2年連続で落選。特に1870年に出品したモネ『ラ・グルヌイエール』。当時、水面に反射する太陽光の表現を極め続けていた。【1870年モデルのカミーユと結婚】1873年小さなボートを買って、アトリエ舟として使うようになった。マネはモネとカミーユの一枚を描いている。エドゥアール・マネ⦅アトリエ舟で描くクロード・モネ⦆1874年。
モネ 睡蓮のとき2・・・絶望を超えて、朦朧派
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2024/11/post-952362.html
モネ 睡蓮のとき・・・モネの生涯と藝術、絶望を超えて、失われた時を求めて
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2024/10/post-fcbd04.html
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プレスリリース
印象派の巨匠クロード・モネ(1840–1926)は、自然光の移ろいに魅せられ、その美しさをカンヴァスにとどめようと生涯をかけて探求しました。
オルセー美術館がモネの没後100年という国際的な記念の年の幕開けを飾る展覧会と位置づける本展では、ル・アーヴル、アルジャントゥイユ、ヴェトゥイユ、ジヴェルニーなど、モネの創作を語る上で重要な場所と時代から、その画業の発展を丹念にたどります。
また、同時代の絵画や写真、浮世絵、アール・ヌーヴォーの工芸作品などの表現との関わりから、モネの創作の背景や動機を読み解き、現代の映像作家アンジュ・レッチアによるモネへのオマージュとして制作された没入型の映像作品も展示します。様々なジャンルの視覚表現を交錯させることで、モネの創作活動に新たな光を当てる、全く新しいモネの展覧会です。
モネの作品41点を含む、オルセー美術館所蔵の約90点に、国内の美術館や個人所蔵作品を加えた合計約140点で、風景画家としてのモネの魅力に迫ります。
近代化が進み、風景が大きく変わる時代に生きたモネは、変わりゆく風景とどう向き合い、それをどう作品に表現したのでしょうか。自然環境が変動する今、モネのまなざしを通して「自然とどのように向き合うのか」という普遍的な問いを、現代を生きる私たちに投げかけます。
1. モネの画業を年代順に追い、風景画をどう革新したかに迫る
モネの画業を年代順に追い、風景画をどう革新したかに迫るクロード・モネはその生涯を通じてさまざまな場所を訪れ、さまざまな方法で制作を行っています。モネの画業を年代順に追い、晩年の「睡蓮」の連作へと繋がっていくテーマや技法を順を追って提示し、モネの風景画の革新性に迫ります。
2. 同時代の画家たちの絵画や写真、浮世絵、アール・ヌーヴォーの美術工芸など、様々なジャンルの視覚表現と交錯させる、前例のない全く新しいモネの展覧会
モネの風景画制作は、穏やかな情景や、時に雪、風、雨といった猛威を振るう自然に向き合い、それをありのままに画布に留めた、と説明されがちです。しかしモネの風景画は、実は画家のたゆまざる探求による幅広い視覚的・芸術的教養から育まれたものだったのです。自然との対時を起点としながらも、モネは過去の、あるいは同時代の画家たちの影響に留まらず、写真や浮世絵など新しい表現にも注目し、そうした変化の中で画家としての自分の立ち位置を明確にしたのです。
3. オルセー美術館が誇るモネ・コレクションから選りすぐりの作品が来日
オルセー美術館が所蔵するモネの絵画作品は73点。世界で最も重要かつ網羅的なコレクションのひとつです。これはモネの画家仲間ギュスターヴ・カイユボットをはじめ、多くの人たちの寄贈により形成されたもので、このコレクションを通じて、印象派を一人で要約しているかのようなモネの画業を辿ることができるのです。今回はその中から日本初公開作品を含む選りすぐりの41点が来日します。
https://www.artpr.jp/artizon/monet2026
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★展示作品の一部
クロード・モネ《戸外の人物習作-日傘を持つ右向きの女》1886年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵 Photo コピーライト GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Stéphane Maréchalle / distributed by AMF
【日本初公開】クロード・モネ《トルーヴィル、ロシュ・ノワールのホテル》1870年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵
クロード・モネ《かささぎ》1868-69年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵
クロード・モネ《パリ、モントルグイユ街、1878年6月30日の祝日》1878年、オルセー美術館蔵 
クロード・モネ《死の床のカミーユ》1879年 オルセー美術館蔵
クロード・モネ《アルジャントゥイユのレガッタ》1872年頃、オルセー美術館蔵
【日本初公開】クロード・モネ《昼食》1873年頃、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵 
クロード・モネ《サン=ラザール駅》 1877年、油彩・カンヴァス 、オルセー美術館蔵F
クロード・モネ《ロンドン国会議事堂、霧の中に差す陽光》1904年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵 
クロード・モネ《ジヴェルニーのモネの庭》1900年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵 
【日本初公開】ピーター・ヘンリー・エマーソン《睡蓮の採取》1886年、プラチナ・プリント、ガラス乾板より、オルセー美術館蔵
クロード・モネ《ノルウェー型の舟で》1887年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵 
クロード・モネ《睡蓮の池》1907年、油彩・カンヴァス、石橋財団アーティゾン美術館蔵
クロード・モネ《睡蓮の池、緑のハーモニー》1899年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵
エミール・ガレ《静淵》1889-90年、多層吹きガラス、オルセー美術館蔵
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参考文献
モネ没後100年 「クロード・モネ —風景への問いかけ」・・・ル・アーヴルからの旅立ち
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2026/02/post-8cc859.html
『クロード・モネ —風景への問いかけ』』図録、アーティゾン美術館、2026。p122。
「大回顧展 モネ 印象派の巨匠 その遺産」図録、国立新美術館、2007
印象派 モネからアメリカへ モネ、絶望を超えて
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2024/02/post-21e84b.html
モネ 連作の情景・・・人生の光と影
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2023/11/post-220389.html
憧憬の地 ブルターニュ・・・最果ての地と画家たち2023
https://bit.ly/3ZkZsX8
クロード・モネ『日傘の女』・・・運命の女、カミーユの愛と死
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2017/08/post-2d7c.html
「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」国立新美術館・・・光の画家たちの光と影
http://bit.ly/2oiNKhb
シュールレアリスムの夢と美女、藝術家と運命の女
http://platonacademy.cocolog-nifty.com/blog/2017/08/post-62f4.html
モネ 睡蓮のとき・・・モネの生涯と藝術、絶望を超えて、失われた時を求めて
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2024/10/post-fcbd04.html
モネ 睡蓮のとき2・・・絶望を超えて、朦朧派
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2024/11/post-952362.html
大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第382回
国立新美術館で「オルセー美術館展 印象派の誕生 ―描くことの自由―」国立新美術館、2014年7月9日(水)~10月20日(月)モネの『草上の昼食』が日本初公開! 「印象派の殿堂」オルセー美術館から珠玉の絵画84点が来日。
――
★モネ没後100年 クロード・モネ —風景への問いかけ、アーティゾン美術館
2026年2月7日[土] - 5月24日[日]
https://www.artizon.museum/exhibition/detail/47

2026年2月 2日 (月)

「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」・・・夜明け前と黄昏時、青い光が漂う時間

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大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第418回

夜明け前と日没前、青い光が辺り一面に漂う時間帯、スウェーデンの地平線の美
沈む太陽が地平線を赤く染める黄昏時、妖精が住む世界
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ニルス・ブロメール《草原の妖精たち》1850年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵。
夜明け前と日没前、青い光が辺り一面に漂う時間帯、スウェーデンの地平線の美
沈む太陽が地平線を赤く染める黄昏時、妖精、トロル、トムテ(小人)が存在する世界。スウェーデン国王グスタヴ・ヴァーサが建設したクリップスホルム城が建つ。
グスタヴ・アンカルクローナ「太古の時代」1897、
昇る朝日が地平線を赤く染め、夜明け前と日没前、青い光が辺り一面に漂う時間帯、
アウグスト・ストリンドバリ《ワンダーランド》1894年 油彩、厚紙 スウェーデン国立美術館蔵
エウシェーン王子《静かな湖面》1901年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
北欧の美術、デザイン、木造の家への関心が世界的に高まっている。
「ヒルマ・アフ・クリント展」2025、「ウィルヘルム・ハマスホイとデンマーク絵画」2020、「北欧の神秘」2025、「ムンク展 共鳴する魂の叫び」東京都美術館2018
スウェーデン絵画の根源にある、世界観、美意識とは何か。
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3人の画家の家 一生住む家、700年の家
アンデシュ・ソーン《故郷の調べ》1920年、13世紀の家を購入、アトリエして一生住む。
ブリューノ・リリエフォッシュ《カケス》1886年、故郷ダーラナ地方、島の家に自然と共生する。
カール・ラーション《カードゲームの支度》1901年、カール・ラーション(1853-1919)。1888年カーリンの父から譲り受け、妻のカーリンとともに改装した家、アトリエして一生住む。(「スウェーデン国立美術館、スウェーデン絵画のABC」)
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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■展示作品の一部
ニルス・ブロメール《草原の妖精たち》1850年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Cecilia Heisser / Nationalmuseum
エードヴァッド・バリ《夏の風景》1873年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Nationalmuseum
カール=フレードリック・ヒル《花咲くリンゴの木》1877年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Erik Cornelius / Nationalmuseum
ブリューノ・リリエフォッシュ《カケス》1886年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Cecilia Heisser / Nationalmuseum
アンデシュ・ソーン《故郷の調べ》1920年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵Photo: Viktor Fordell / Nationalmuseum
カール・ラーション《カードゲームの支度》1901年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Anna Danielsson / Nationalmuseum
アウグスト・ストリンドバリ《ワンダーランド》1894年 油彩、厚紙 スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Erik Cornelius / Nationalmuseum
グスタヴ・フィエースタード《冬の月明かり》1895年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Hans Thorwid / Nationalmuseum
エウシェーン王子《静かな湖面》1901年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Anna Danielsson / Nationalmuseum
ニルス・クルーゲル《夜の訪れ》1904年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Nationalmuseum
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■参考文献
「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」・・・夜明け前と黄昏時、青い光が漂う時間
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2026/02/post-bb0912.html
ヒルマ・アフ・クリント展・・・霊界を旅する者

http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2025/04/post-0489b5.html
「ムンク展 共鳴する魂の叫び」2018・・・波瀾の画家、月光が輝く海と女
https://bit.ly/2Jw3pTO
マスホイとデンマーク絵画展2020・・・背を向けて佇む女、憂いを帯びる世界、だれもいない部屋
https://bit.ly/2RNIUq8
ヴィルヘルム・ハンマースホイ、静かなる詩情・・・陽光、あるいは陽光に舞う塵2008
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-f259.html
「北欧の神秘 —ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画」(SOMPO美術館)レポート。知られざる北欧美術の世界に没入する。
3月23日~6月9日、新宿のSOMPO美術館で開催。北欧3ヶ国の協力のもと、日本では過去最大規模となる約70点の作品が公開。北欧絵画の見どころを解説しながらレポートする。
https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/sompo-museum-magic-north-report-202403
――
ヨーロッパトウヒ. 商品名, グレゴリアーナ. 学名, Picea Abies'Gregoryana'. 別名. 科名, マツ科トウヒ属. 原産地. 植物分類, 樹木、コニファー類.
https://www.komeri.com/contents/flower/list/yo_001.html
ドイツ・トウヒ
ヴィゴ・ヨハンスン《きよしこの夜》1891年ヒアシュプロング・コレクション蔵
ハマスホイとデンマーク絵画展・・・背を向けて佇む女、憂いを帯びる世界、だれもいない部屋
https://bit.ly/2RNIUq8
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スウェーデン、3人の画家の家。
カール・ラーション、1888年ダーラナ地方の妻カーリン父から譲り受け、家に引っ越し、多くの絵を描く。《カードゲームの支度》1901。
アンデシュ・ソーン、ダーラナ地方の13世紀の家を手に入れ、アトリエにし、そこに住んだ。アンデシュ・ソーン《音楽を奏でる家族》1905、
ブッリューノ・リリエフォッシュ、ダーラナ地方の家のアトリに住む。《カケス》1887。
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プレスリリースより
ヨーロッパ北部、スカンディナヴィア半島に位置する国スウェーデン。本展は近年世界的に注目を集める、スウェーデン美術黄金期の絵画を本格的に紹介する展覧会です。
スウェーデンでは、若い世代の芸術家たちが1880年頃からフランスで学び始め、人間や自然をありのままに表現するレアリスムに傾倒しました。彼らはやがて故郷へ帰ると、自国のアイデンティティを示すべくスウェーデンらしい芸術の創造をめざし、自然や身近な人々、あるいは日常にひそむ輝きを、親密で情緒あふれる表現で描き出しました。

本展はスウェーデン国立美術館の全面協力のもと、19世紀末から20世紀にかけてのスウェーデンで生み出された魅力的な絵画をとおして、自然と共に豊かに生きる北欧ならではの感性に迫ります。
――
第1章 スウェーデン近代絵画の夜明け
スウェーデンでは、北欧諸国のなかでは早い時期にあたる1735年に王立素描美術アカデミーが創立され、1768年には王立美術アカデミーに改称、フランスにならった伝統的な美術教育が行われていました。19世紀半ばになると、風景画制作において先進的であったイタリアやドイツへ赴く画家たちが現れます。とりわけドイツのデュッセルドルフでは、美術アカデミーにおいて風景画の特別授業が行われ、ロマン主義的な荒々しくも崇高な自然の姿を描く画風が好まれました。1850年にストックホルムでその一派を紹介する展覧会が開催されたことも一つの契機となり、スウェーデンをはじめとする北欧出身の多くの芸術家たちがこの地に心惹かれました。一方で、少しずつ確実に、スウェーデンという自国を見つめる目がうまれていたことも事実でした。
ニルス・ブロメール《草原の妖精たち》1850年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Cecilia Heisser / Nationalmuseum
ニルス・ブロメール(1816-1853)は、19世紀半ばに活動した、スウェーデン独自の芸術の確立を目指した最初の画家で、北欧の古代神話や伝説に基づく作品を主題としました。本作は四季を表す連作の一枚として構想され、黄昏時の草原で「春」を表す妖精たちが手を取り合って踊っています。遠くに見える城はスウェーデンに実在する城であることから、この絵の舞台がスウェーデンであることを示しています。北欧の古代神話への関心や黄昏時の光の描写は、次の世代のスウェーデンの画家たちが探求していく方向性をはらんでいるといえるでしょう。
エードヴァッド・バリ《夏の風景》1873年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Nationalmuseum
エードヴァッド・バリ(1828-1880)はデュッセルドルフで風景画を学び、帰国後の1858年にスウェーデン王立美術アカデミーに風景画科を新設、スウェーデンの風景画の指導的立場を担いました。バリは次第にデュッセルドルフ派の荒々しくドラマティックなロマン主義的な画風から距離を置き、本作のように「スウェーデン的な風景」、つまりスウェーデン中部の湖水地方の清新な空気に満ちた穏やかな夏の風景を描くことで人気を博しました。

第2章 パリをめざして―フランス近代絵画との出合い
1880年代にスウェーデン美術は劇的な変化を遂げます。王立美術アカデミーの時代遅れの教育法に不満を抱いていた若い世代の芸術家たちは、新しい表現や価値観、そして専門的な指導を受ける機会を求めて、フランスのパリへと向かいました。当時のパリでは、伝統に反旗を翻す印象派などの新しい表現が広まりつつありましたが、スウェーデンの芸術家たちが特に魅了されたのが、人間や自然のありのままの姿を見つめ、確かな描写力で伝えるレアリスムや自然主義的な表現でした。
とりわけフランスの画家ジュール・バスティアン=ルパージュを手本としたスウェーデンの画家たちは、素朴で情緒あふれるその手法を貪欲に吸収し、都市に生きる人々や労働者、目の前に広がる光景をみずみずしく明るい光の下に描き出しました。
カール=フレードリック・ヒル《花咲くリンゴの木》1877年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Erik Cornelius / Nationalmuseum
カール=フレードリック・ヒル(1849-1911)は、印象派に深い理解を示した画家です。1870年代にフランスに滞在したヒルは、カミーユ・コローなどバルビゾン派や印象派との出会いを通じて明るく澄んだ色彩を用いるようになりました。本作は彼が1877年春にセーヌ河畔のボワ=ル=ロワに滞在していた際に制作されたものです。この町でヒルは短い花の盛りに十数点の果樹の絵を描きました。満開の白いリンゴの花を照らす穏やかな光と、それを包み込む大気を素早くも確かな筆致で捉えています。
アーンシュト・ヨーセフソン《少年と手押し車》1880年 油彩、板 スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Nationalmuseum
本作はアーンシュト・ヨーセフソン(1851-1906)にとって転換点となる時期に描かれました。前年にパリを訪れ、自然光の中で明るい色彩を用いて描く外光派の作品に触れたことが契機となり、本作に見られるように彼の作品も明るい自然主義的なものへと移行しました。フランスの新しい潮流に触れたヨーセフソンは、旧態依然とした美術アカデミーに対して新たな芸術の創造を目指す「オポネンテナ(Opponenterna:反逆者たち)」と呼ばれる若手の芸術家グループの中心人物となりました。

第3章 グレ=シュル=ロワンの芸術家村
19世紀の絵画芸術におけるリアリズムを実践する方法のひとつに、戸外での制作がありました。バルビゾンに集い戸外制作を実践していたコローやミレーにならい、フランスのいくつかの地域には北欧の芸術家たちのコロニー(共同体)が形成されました。なかでも1880年代前半、スウェーデン出身の芸術家たちが拠点としたのは、パリの南東約70キロに位置するグレ=シュル=ロワンです。
この村にはスウェーデンの画家だけではなく、各国からも芸術家が集まり、のちに日本人画家の浅井忠や黒田清輝も滞在しました。スウェーデンの画家たちは夏のあいだこの素朴で穏やかな田舎町に身を置き、田園生活を送りながら牧歌的な情景を淡く透明感のある色彩で描きました。
ブリューノ・リリエフォッシュ《カケス》1886年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Cecilia Heisser / Nationalmuseum
動物画家であるブリューノ・リリエフォッシュ(1860-1939)は、自然環境と野生動物のかかわりに関心を寄せ、鋭い観察眼と構成力でその姿を描きました。本作ではカケスが仲間を追って飛び立つ直前、周囲を見回す一瞬の動きを捉えています。彼は、動物の生存戦略のひとつである、環境へ擬態する姿を好んで描きました。

第4章 日常のかがやき―“スウェーデンらしい”暮らしのなかで
1880年代の終わりころになると、フランスで制作していた多くのスウェーデンの芸術家たちは、それぞれの故郷に戻っていきます。その一因には、都会の喧騒に疲れ、郷愁の念が高まったことが挙げられます。
しかし、最大の理由は、フランスでの経験を経た芸術家たちの心に、「スウェーデンらしい」新たな芸術を作り出したいという希望が芽生えたことにあるでしょう。彼らはスウェーデンに戻ると、自らのリアルにほかならないスウェーデンの日常の暮らしや身近な人の姿にまなざしを向け、その飾らない様子を親しみやすい表現で描きました。また、近代化の影で失われつつある、スウェーデンの伝統的な民俗文化を主題とする芸術家も現れましアンデシュ・ソーン《故郷の調べ》1920年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵Photo: Viktor Fordell / Nationalmuseum
アンデシュ・ソーン(1860-1920)は、国際的に最も成功を収めた北欧の画家の一人です。1896年にパリから、スウェーデン中部に位置する故郷ダーラナ地方へ戻り定住すると、この地に住む人々や失われつつある伝統的な民俗文化に目を向けました。最晩年に制作された本作には、ダーラナ地方の民俗衣装を身にまとい、リュートを奏でながら歌う女性の気高い姿が描かれています。
カール・ラーション《カードゲームの支度》1901年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Anna Danielsson / Nationalmuseum
スウェーデンの国民的画家として知られるカール・ラーション(1853-1919)。彼が妻のカーリンとともに改装した家と、そこでの家族の暮らしを描いた水彩画は、画集として広く一般に親しまれました。本作では、奥の居間で大人たちが当時流行したカード遊び「ヴィーラ」を始めるのでしょう、ダイニング・ルームではカーリンがゲームの合間に楽しむ酒類を準備しています。テーブルの左端に座るのは夫妻の子どもであるブリッタとチャシュティです。暗く凍てつく冬の戸外とは対照的に、オイルランプとろうそくの灯りが家庭の温かく幸福な情景をやさしく照らし出しています。

第5章 現実のかなたへ―見えない世界を描く
フランスから帰国したスウェーデンの画家たちのなかには、目の前の事物を客観的に描写することよりも、自身の感情や気分を表現することに次第に関心を寄せるようになった者たちもいました。
こうした動きは、近代化とともに発展した科学や合理主義への反動と見ることができ、同時代のヨーロッパ各地で展開された象徴主義の流れとも呼応しています。彼らは絵画の主題として、自国スウェーデンにまつわる宗教や文学、歴史、寓話などを取り上げ、目に見えない内面的な世界を象徴的に示そうとしました。風景画においても、画家自身の主観やスピリチュアルな雰囲気を醸し出すような表現が生み出されました。
アウグスト・ストリンドバリ《ワンダーランド》1894年 油彩、厚紙 スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Erik Cornelius / Nationalmuseum
19世紀北欧を代表する小説家、劇作家アウグスト・ストリンドバリ(1849-1912)は、専門的な美術教育は受けていないものの、精神的危機に陥った時期に絵画制作に没頭しました。彼は本作の主題を「鬱蒼とした森」とし、加えてこの作品を「ワンダーランド、光と闇の闘い」と解釈しました。後年の論考で、元々彼は「日没の海が見える森の中」を描こうとしていましたが、描くうちに森は洞窟に、明るい中央部分ははるか彼方へ広がる光の空間へと変容していったと回想しています。このような偶然性にまかせた実験的な表現に、ストリンドバリの絵画制作に対する関心の在りかがうかがえます。

第6章 自然とともに―新たなスウェーデン絵画の創造
1890年代から世紀転換期にかけて、スウェーデンの風景画は大きな変化を迎えました。かつては「描くべきもののない国」とさえ言われたスウェーデンでしたが、森林や湖、未開の原野や山岳地帯といったスウェーデンならではの自然が芸術家たちによって「発見」され、それらを描くにふさわしい表現方法がさまざまに模索されました。
たとえば、カール・ノードシュトゥルム、ニルス・クルーゲル、リッカッド・バリは、スウェーデン西海岸の町ヴァールバリを舞台に、海岸線や内陸の平原を題材とし、ポール・ゴーガンの作品に示唆を得て、自然の外観と構図そして自身の感覚を統合する独自の表現方法を追求しました。なかでも、スウェーデン絵画の真骨頂といえるのが、夕暮れや夜明けの淡く繊細な光の表現です。
彼らの作品からは1880年代の作品に見られた明るく輝く日の光は消え去り、代わりに北欧の夏の夜に特有の、長い時間続く薄明の光が叙情をたたえてスウェーデンの豊かな自然の風景を照らし出すようになりました。
グスタヴ・フィエースタード《冬の月明かり》1895年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Hans Thorwid / Nationalmuseum
グスタヴ・フィエースタード(1868-1948)は、スウェーデンの自然と深く結びついた冬の情景を得意とした画家です。1897年にはスウェーデン中部ヴァルムランド地方のラッケン湖畔に定住しました。本作では、星空のもと樹霜に覆われた雪深い森が広がっており、細かな筆致で色が重ねられ、雪の冷たい輝きが装飾的に表現されています。フィエースタードの作品は装飾的な性格が強く見られ、彼が描いた下絵をもとに彼の姉妹や妻のマイヤがタペストリーに仕立てることもありました。
エウシェーン王子《静かな湖面》1901年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Anna Danielsson / Nationalmuseum
エウシェーン王子はスウェーデン絵画の黄金期を代表する風景画家の一人です。本作は、1890年代に始まるスウェーデンのナショナル・ロマンティシズムを象徴する一作であり、王子が夏を過ごしたストックホルム南部に位置するティーレスウーで描かれました。ナショナル・ロマンティシズムとは、その国や民族のアイデンティティを示す画題を見出し、それを表現するにふさわしい方法を追求する傾向を指します。本作では雲に覆われる空の彼方の地平線を、北欧の夏の夜の特徴である、長い時間続く薄明の淡く繊細な光が照らし、静けさをたたえた画面に永遠性を与えています。
ニルス・クルーゲル《夜の訪れ》1904年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo:Nationalmuseum
ヴァールバリ派を代表する風景画家ニルス・クルーゲル(1858-1930)は、ファン・ゴッホの素描から着想を得て、油彩の上にインクの点や短いストロークを重ねる独自の描法を確立、画面全体の統一を目指しました。本作では、短いストロークによって表現された北欧の夏の夜を象徴する青い光が、空を満たすだけではなく地上にも降り注ぎ、草を食む馬たちのいる風景に壮大で幻想的な雰囲気を生み出しています。
戦後、家具や照明などの北欧デザインが先行して国際的評価を確立しましたが、21世紀に入ると絵画も再評価が進み、展覧会でも人気が高まってきています。そのなかで、本展は、近代黄金期のスウェーデン絵画を過去最大規模で紹介する画期的な試みです。カンヴァスに宿る日常への温かな眼差しや、四季の移ろいをすくい取る静謐な叙情は、北欧画家ならではの趣にあふれています。
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東京都美術館開館100周年記念
スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき
会場:東京都美術館 企画展示室(東京都台東区上野公園8-36)
会期:2026年1月27日(火)~4月12日(日)
開室時間:9:30~17:30(金曜は20:00まで)
https://www.tobikan.jp/exhibition/2025_sweden.html
――
山口県立美術館 4月28日(火)から
愛知県美術館 7月9日(木)から

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