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2024年12月 1日 (日)

「カナレットとヴェネツィアの輝き」18世紀ヴェドゥータの巨匠・・・美しきもの見し人は


Canaletto-1760-2024
Canaletto-1760-1-2024
大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第384回
灼熱の夏のウィーン、ベル・ヴェデーレ宮殿でクリムト「口づけ」をみると、カナレットのヴェドゥータが壁面に飾られている。貴族たちの子弟が、イタリア、地中海都市に知恵と学問の源泉を求めて旅した古き良き時代の思い出である。アウグスト・フォン・プラーテン『美しきもの見し人は』を思い出す。
美しきもの見し人は、はや死の手にぞわたされつ
世のいそしみにかなわねば、されど死を見てふるうべし
美しきもの見し人は

愛の痛みは果てもなし、この世におもいかなえんと
望むはひとり痴者ぞかし、美の矢にあたりしその人に
愛の痛みは果てもなし

げに泉のごとも涸れはてん、ひと息ごとに毒を吸い
ひと花ごとに死を嗅がむ、美しきもの見し人は
げに泉のごとも涸れはてん
アウグスト・フォン・プラーテン『戦慄に満ちた美への賛歌、もしくは悲歌』生田春月訳
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
――
本展はヴェドゥータの巨匠カナレット(1697~1768年)の全貌を紹介する日本で初めての展覧会。スコットランド国立美術館など英国コレクションを中心に、油彩、素描、版画など約60点で構成する。カナレットによる緻密かつ壮麗なヴェネツィアの描写を通じ、18世紀の景観画というジャンルの成立過程をたどるとともに、その伝統を継承しヴェネツィアの新たなイメージを開拓していった19世紀の画家たちの作品もあわせて紹介する。
【カナレット=ジョヴァンニ・アントニオ・カナルGiOVANNNI ANTONIO CANAL 1697-1768】
カナレットの本名はジョヴァンニ・アントニオ・カナル。1697年、劇場の舞台美術家を父にヴェネツィアに生まれた。1719年、オペラの舞台美術の仕事のため父に伴いローマへ赴き、そこでこの地の景観画家とも知り合った。生地ヴェネツィアの陽光きらめく都市景観を鮮やかに描き出した景観画「ヴェドゥータ」で名を馳せ、とりわけ英国のパトロンに恵まれて英国人グランド・ツアー客に競って求められました。1746年からは英国に長期滞在し、現地の景観も描いている。1768年、故郷ヴェネツィアで没した。
【カナレットのウェドゥータ】(都市景観画)
カナレットがヴェネツィアで活動を始めると、彼の作品はこの地を【グランド・ツアー】(有力な貴族の子弟が見聞を広めるために欧州各地を周遊する長期旅行。数か月から数年に及ぶ。)】で訪れた英国人旅行客にとりわけ人気を博し、旅の記念としてこぞって求められるようになる。カナレットは、ジョゼフ・スミスをはじめとする同時代の有力な英国人のパトロンに恵まれ、今も英国には数多くのカナレット作品が遺される。第2章では主に英国に数多く残る作品群からカナレットの業績が紹介される。
カナレットがヴェドゥータを描き始めたのは1719年頃からとされ、当初は光と影の効果を重視した雰囲気の描写が特徴的でした。それが次第に、すっきりと澄んだ空に、定型的な水の波紋、定規を用いて堅固に描かれた建物といった画風が定着していく。また、彼は画面のあちらこちらに様々な仕草の人物を好んで描くようになった。
ヴェネツィアに生まれヴェネツィアに没したカナレットの描く、整然とした街並み、輝く水面、華やかな祝祭の情景は、同地の典型的イメージとして定着するほど絶大な人気を博した。
ヴェドゥータの画家たち
カナレットの影響を受けた18世紀のヴェネツィアの画家たち。地誌的に正確に描かれたヴェドゥータ、想像力を駆使し構成された架空の景観画カプリッチョ(綺想画)、いずれもカナレットの影響のもと、異なるアプローチによって数多の作品が制作されていきます。カナレットの甥であるベロットはヴェネツィア国外で各都市のヴェドゥータを数多く制作。
――
展示作品の一部
カナレット《サン・ヴィオ広場から見たカナル・グランデ》1730年以降 油彩/カンヴァス 65.0×83.8cm スコットランド国立美術館 © National Galleries of Scotland
カナレット《カナル・グランデのレガッタ》1730–1739年頃 油彩/カンヴァス 149.8×218.4cm ボウズ美術館、ダラム The Bowes Museum, Barnard Castle, Co. Durham, England/ヴェネツィアを彩る祭りの一つであるレガッタは、カナル・グランデを舞台に行われるボートレース。時に高名な賓客を歓迎するためにも開催された
カナレット《サン・マルコ広場》1732–1733年頃 油彩/カンヴァス 61.0×96.5cm 東京富士美術館 © 東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom
カナレット《ロンドン、ラネラーのロトンダ内部》1751年頃 油彩/カンヴァス51.0×76.0cm コンプトン・ヴァーニー、ウォリックシャー © Compton Verney / Bridgeman Images/742年にロンドン市内に開園した遊興施設「ラネラー」の目玉であったロトンダの内部を緻密に描いているカナレット《昇天祭、モーロ河岸のブチントーロ》1760年 油彩/カンヴァス 58.3×101.8cm ダリッジ美術館、ロンドンDulwich Picture Gallery, London/キリスト昇天祭はヴェネツィアの祝祭の中でも「海とヴェネツィアの結婚式」が行われる重要なもので、本作ではブチントーロと呼ばれる御座船に乗ったドージェ(元首)が描かれている。
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参考文献
ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり・・・ギリシア文化の輝き
地中海 四千年のものがたり・・・藝術家たちの地中海への旅
ルネサンス年代記 レオナルド最後の旅、フランソワ1世
大久保正雄「愛と美の迷宮、ルネサンス、メディチ家と織田信長」
ラファエロ、1505年、レオナルドに会う
孤高の藝術家、ミケランジェロ・・・メディチ家の戦いと美の探求、プラトンアカデミー
メディチ家の容貌、ルネサンスの美貌 理念を追求する一族
「レオナルド×ミケランジェロ展」三菱一号館美術館・・・レオナルド「レダと白鳥」
ルネサンス年代記 ボッティチェリ ルネサンスの理念
宗教の謎、国家と宗教の戦い、第1巻、ギリシアの神々、ローマ帝国、秦の始皇帝、漢の武帝、飛鳥、天平、最澄と空海
宗教の謎、国家と宗教の戦い、第2巻、アカデメイア、ルネサンス、織田信長

「カナレットとヴェネツィアの輝き」18世紀ヴェドゥータの巨匠・・・美しきもの見し人は
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2024/12/post-7e8401.html

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「カナレットとヴェネツィアの輝き」、SOMPO美術館、10月12日(土)〜12月28日(土)

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