鈴木其一・夏秋渓流図屏風・・・樹林を流れる群青色の渓流、百合の花と蝉、桜の紅葉
大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』260回
鈴木其一・夏秋渓流図屏風、群青色の水の流れ金色の線が衝撃的である。百合と紅葉、林と渓流が主役なのか。樹林を流れる群青色の渓流、百合の花と蝉、桜の紅葉、熊笹、樹木に張り付く苔。其一は何を描こうとしたのか。
『夏秋渓流図屏風』の誕生にかかわる先行絵画。円山応挙「保津川図」の渓流の水の流れは強烈である。山本素軒「花木渓流図」は樹林を流れる渓流の構図、渓流の群青は独創的である。鈴木其一は関西旅行して京都の寺院の絵画を研究した。『夏秋渓流図屏風』は40代半ばの最高傑作。師、酒井抱一をこの作で超えたのか。62歳で死す。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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円山応挙(1733年6月12-1795年8月31日)『保津川図屏風』(1795年)62歳で死す。
京都市中にある京友禅の老舗に代々受け継がれてきた絵画。天才絵師・円山応挙の絶筆。八曲一双の屏風絵『保津川図屏風』、高さおよそ1.5m、幅は各隻5mに迫る特大の屏風絵。右隻には水しぶきを浴びそうな迫真の激流、左隻は、ゆったりとした渓谷の風情。この大作を、応挙は亡くなる1カ月前に描き上げた。保津川上流にある丹波国の村の農家に生まれた応挙は、10代前半で京の都へとやって来た応挙は南蛮渡来の眼鏡絵と出会う。眼鏡絵とは西洋の透視図法で描かれた絵をレンズで見る。応挙は、写生を基に絵を描いた最初の絵師、1000人を超える弟子を抱えた。
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展示作品の一部
鈴木其一・夏秋渓流図屏風19世紀
圓山應舉「保津川図」1795、18世紀(千總)
山本素軒「花木渓流図」17-18世紀、生年不詳、没年1706 師匠、山本素程、狩野派。
其一の関西旅行の記録『癸巳西遊日記』(鈴木其一原本、鈴木守一写)19世紀
酒井抱一「夏秋草図」(東京国立博物館)
酒井抱一『青楓朱楓図屏風』
《檜蔭鳴蝉図》谷文晁筆 日本・江戸時代 19世紀 公益財団法人阪急文化財団 逸翁美術館蔵
参考文献
「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」東京都美術館・・・世に背を向け道を探求する、孤高の藝術家
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「円山応挙から近代京都画壇へ」藝大美術館・・・円山応挙「松に孔雀図」大乗寺
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鈴木其一・夏秋渓流図屏風・・・樹林を流れる群青色の渓流、百合の花と蝉、桜の紅葉
https://bit.ly/2ZCzN3x
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佐藤 康宏
「鈴木其一・夏秋渓流図」(根津美術館)は、この1双の屛風絵を中心に据えて、現代人も驚かす強烈なイメージが、どのようなイメージの脈絡の上に生まれたのかを探ろうとする特別展です。
狩野常信をはじめとする檜を描いた先行作例とか、圓山應舉が屛風に渓流を描く「保津川図」(千總)、樹木と渓流を組み合わせる山本素軒の「花木渓流図」、其一の関西旅行の記録である『癸巳西遊日記』などが、動員されます。
こういうソース探しの試みは本の挿図でやってもいいではないかと思われるかもしれませんが、「名作誕生」(東京国立博物館、2018年)でも実際の作品を並べてみるのは、新たな実感を伴うものではなかったでしょうか。どうぞ体験なさって下さい。
ほかに其一作品もいろいろ出ています。「秋草・波に月図」の小屛風など、表裏の絵が互いに映り合う洒落た趣向です。少し展示替えがあり、酒井抱一「夏秋草図」(東京国立博物館)は、会期の終盤、12月7日-12月19日の間だけお出ましです。
「夏秋渓流図」は鈴木其一(1796?-1858)の40代半ばの作と推定されるのですが、やはり彼の最高傑作ですね。その後は概してつまらなくなります。残念だなあと思いますが、自分自身も人様からそんなふうに見られているかもしれませんので、責めるのはやめましょう。11月5日 17:02
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鈴木其一(1796-1858)の筆になる「夏秋渓流図屏風」は、岩場を削る水流のある檜の林を確かな現実感をもって描いた画面に、異様な感覚を抱かせる描写が充満する作品です。
其一は、江戸の地で、一世紀前の京都で活躍した尾形光琳(1658-1716)を顕彰し、「江戸琳派」の祖となった酒井抱一(1761-1828)の高弟ですが、徹底した写実表現やシャープな造形感覚、ときに幻想的なイメージを加え、個性を発揮しました。
そんな其一の画業の中心にあるのが、最大の異色作にして代表作でもある「夏秋渓流図屏風」です。2020年に、其一の作品としては初めて、重要文化財に指定されました。
本展では、抱一の影響や光琳学習はもとより、円山応挙や谷文晁、古い時代の狩野派など琳派以外の画風の摂取、そしてそれらを、自然の実感も踏まえつつ統合する其一の制作態度を検証して、本作品誕生の秘密を探ります。
根津美術館
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重要文化財指定記念特別展、鈴木其一・夏秋渓流図屏風
根津美術館、2021年11月3日[水・祝]-12月19日[日]
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