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2021年4月

2021年4月29日 (木)

「鳥獣戯画のすべて」・・・謎の絵巻、怪僧・明恵

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大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第241回

八重桜咲く森を歩いて、博物館に行く。うこん桜、御衣黄桜、咲き乱れ、紫の躑躅燃える森。1200年で最も早く桜が開花した春。拈華微笑御衣黄桜ひらきけり。春愁のかぎりを躑躅燃えにけり(秋桜子)。
【謎の絵巻「鳥獣人物戯画」、物語の意味、製作目的は謎】
兎と猿が水遊び、兎と蛙が相撲を取り、弓を的に当て合戦する、蛙が田楽を踊り、双六盤を担いだ猿が画面を横切る。蛙本尊の法会に猿が参加する。擬人化された動物たちの愉快で滑稽な姿を、白描画、墨一色で自由闊達に描いた。《鳥獣人物戯画》、12世紀平安時代末期につくられた絵巻。
『鳥獣戯画』甲乙丙丁4巻、各巻11m、全長44m。甲巻には兎、蛙、猿を中心に11種類の動物が登場。乙巻は擬人化をせず、動物図鑑のように15種類の動物たち、空想上の霊獣、麒麟を含む。丙巻は擬人化した動物と人間。丁巻は人間だけが登場する。白描画の線の美しさ、卓越した筆さばき、だが作者は不明である。『鳥獣戯画』をみるのは3度目。だが、全巻をすべて仔細にみるのは、まれなる機会。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
――
最も日本人に知られ愛されてきた絵巻だが、にもかかわらず、制作年代以外、注文主や絵師が誰なのか、そもそも何の目的にためにつくらせたのか、どんな経緯で高山寺に伝来したのか、という基本的な部分さえ明らかになっていない「謎の絵巻」である。《鳥獣人物戯画》とともに有名な明恵上人も、絵巻の作者ではない。
甲巻は11種類の擬人化した動物、乙巻は15種類の動物が登場する。
現在、甲(こう)・乙(おつ)・丙(へい)・丁(てい)の4巻を1件の作品として《鳥獣人物戯画》と呼ぶが、ひと目見れば一目瞭然、各巻はその様式や内容はばらばらで、同じ時代に、同じ筆者の下、一群の作品として制作されたものではない。
――
【土屋貴裕研究員による説明】
13世紀、明恵上人によって再興され、華厳と密教、仏教美術の拠点になっていた高山寺へ引き寄せられ、動物たちが生き生きと描かれた絵巻が納められた。誰が描き、誰が納めたのかわからない。明恵上人自身も絵巻を目にしていない。有名なのは甲巻の一部だけ、4巻それぞれの特徴を分析する。
『甲巻、乙巻』は12世紀後半の制作、同一筆者(甲巻の中で筆者が替わる)。
【甲巻】には兎、蛙、猿を中心に11種類の動物が登場し、人間のように遊んだり、法会を催す様子を描いている。奇想天外な世界が繰り広げられる。2015年までの修復から明らかになったこともいくつかあり、常に注目を集めてきた。
【乙巻】は擬人化をせず、動物図鑑のように15種類の動物たち(空想上の霊獣や虎や象など異国の珍獣)を、動物として描いている。途中、牛たちがぶつかり合って戦う場面は、《年中行事絵巻》の園韓神祭(そのからかみのまつり)に描かれる「角合わせ」の行事に似ていることから、《年中行事絵巻》に近いところで制作されたのではないか。
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『丙巻、丁巻』とも制作されたのは13世紀鎌倉時代だが、【丙巻】は擬人化した動物と人間、【丁巻】は人間だけが登場する。
【丙巻】になると、今度は人間が登場する。彼らも囲碁や双六、将棋や取っ組み合い、互いの首に細い布をかけて引き合う「首引き」等、滑稽な遊びに興じ、画面には俗な笑いがあふれ。後半は一転、甲巻と同じく擬人化された動物たちが遊びを繰り広げるが、兎の出番は少なく、主役は猿と蛙。
【丁巻】では画風が変わり、登場するのも人間だけ。即興的な筆線で、曲芸や鞠打ち、流鏑馬や田楽、法会など、滑稽な場面と真剣な場面が交互に続く。法会に列席しているはずの貴族が1人だけ、振り返っている姿は、丁巻の筆者ではないかとも言われている。まるで前の場面に描かれた、木遣りの騒ぎを聞きつけたかのように。
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展示作品の一部
『甲巻』『乙巻』は12世紀後半、平安時代後期の制作、同一筆者(甲巻の中で筆者が替わる)
『丙巻』『丁巻』とも制作されたのは13世紀鎌倉時代
★断簡、摸本
鳥獣戯画模本(長尾家旧蔵本) 室町時代 15~16世紀 ホノルル美術館、前期展示場面、4月13日(火)~5月9日(日)Honolulu Museum of Art, Gifts of the Robert Allerton Fund, 1954(1951.1) and Jiro Yamanaka, 1956 (2212.1)
鳥獣戯画断簡(MIHO MUSEUM本〈丁巻〉)鎌倉時代 13世紀、滋賀・MIHO MUSEUM
鳥獣戯画模本(住吉家旧蔵品)巻第五 安土桃山時代 慶長3年(1598)東京・梅澤記念館
重要文化財 鳥獣戯画断簡(東博本)平安時代 12世紀 東京国立博物館 通期
重要文化財 明恵上人坐像 鎌倉時代 13世紀 京都・高山寺 通期
重要文化財 子犬 鎌倉時代 13世紀 京都・高山寺 通期
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★参考文献
図録「国宝 鳥獣戯画のすべて」東京国立博物館2021
図録「鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─」東京国立博物館2015
特別展「鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─」2015年4月28日(火)から2015年6月7日(日)まで
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1707
https://bit.ly/2QigUxw
「鳥獣戯画のすべて」・・・謎の絵巻、怪僧・明恵
https://bit.ly/32XqQ2H
「鳥獣戯画のすべて」・・・怪僧・明恵
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★「国宝 鳥獣戯画のすべて」東京国立博物館、2021年4月13日(火)~5月30日(日)
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2009

2021年4月 3日 (土)

渡辺省亭展、欧米を魅了した花鳥画・・・花の盛りを過ぎ、風が吹き、花びらが零れ落ちる「牡丹に蝶の図」

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大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第240回

花盛りの森を歩いて、藝大美術館に行く。上野の森は桜満開、人があふれている。仏大統領は3月31日パリなどで導入されている都市封鎖を全土に拡大すると発表した。
「牡丹に蝶の図」花の盛りを過ぎ、風が吹けばこぼれ落ちてしまう花、退廃的な雰囲気が漂う。落ちていく雄蕊、風の流れ、花びら落ちていく時間の経過が描かれている。*
忘れられた知られざる名匠による繊細で洒脱な花鳥画、フランス人を魅了し、印象派画家と交流した。
【美人画、省亭と勝川春章】渡辺省亭「七美人之図」は室町時代の「竹林七賢図」の水墨画の世界を美人画で表現する。勝川春章「竹林七研図」を直接参照したらしい*。省亭の妻は美人だった。省亭の妻さくの面影を美人画に投影させていると長男、渡辺水巴の証言がある。【鳥、省亭と伊藤若冲】渡辺省亭「雪中鴛鴦之図」1909年は、伊藤若冲「動植綵絵之内雪中鴛鴦図」の極微の世界を研究し追求する。
【曲水流觴】王羲之、李白、嵯峨天皇、空海、大伴家持、藤原俊成、藤原定家、西行、豊臣秀吉。春の兆し、桜を愛で、桃を愛し、神泉苑で、花の宴を催した文人たち。儚い花、儚い香り、儚い夢、儚い愛、怨憎会苦、愛別離苦の悲しみを歌った詩人たち。この世の苦しみを、花盛り花を愛で、宴を催し、心を癒した。
【花と死】願はくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月のころ、西行『続古今和歌集』。西行は文治六(1190)年二月十六日 73歳で亡くなる。
【花と蝶】花に蜜を求めて乱舞する蝶、花に吹く風、零れ落ちる雄蕊、漂う風。竹林を歩く七美人。省亭は若冲のように鳥を好んだ。花と鳥と龍頭観音を愛した省亭は、可視界の彼方に何を求めたのか。
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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【省亭とパリ】省亭は一八七八年の万博を機にパリに渡り、ドガと印象派の画家たちと交流した。万博出品やロンドンでの個展により海外で高い評価を得た。国内での大規模な作品展は初めて。ドガに贈られた「鳥図」(枝にとまる鳥)。
絹本に薄塗りの技法は、繊細で儚い世界を表現する。
「この絵には、「為ドガース君 省亭席画」という落款が施されている。「ドガース君」とは、踊り子を描いた絵で有名なフランスの画家、エドガー・ドガ(1834~1917)。省亭は明治11年、日本画家としてはじめて渡欧し、パリ万博にまつわる輸出産業の仕事に従事した。その折、その画技が評判となって、ドガをはじめとするフランス人が集まった会合で、席画(即興で描く絵)を披露した。いかにも速い筆捌(さば)きによる枝、葉、そして鳥の尾羽。かすれているのが生々しい。ドガは省亭の筆技に驚嘆したことだろう。そしてこの絵はいま、アメリカ、マサチューセッツ州にあるクラーク美術館に保管されている。はじめて里帰りして展示される。ドガはいつ手放したのか」山下裕二*。
明治20年代にロンドンで開かれた展示会で、100点を超える省亭作品が販売された。
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渡辺省亭、パリと浅草に棲息した絵師 1852年~1918年
嘉永4年12月(1852年1月)江戸神田佐久間町に生まる。16歳、歴史画家・菊池容斎に入門、書道、筆遣いや写生の基礎を学ぶ。明治8年(1875)23歳。起立工商会社に入社、輸出用工芸図案を担当。明治10年(1877)の内国勧業博覧会出品作を翌年のパリ万博にも出品する。
【1878年(明治11年)、パリ万博】26歳
同社派遣により日本画家としてはじめてパリに渡る。帰国後、内外の博覧会や展覧会に花鳥画を中心に積極的に出品、明治20年代、伝統と洋風を融合、自己の様式を確立。
【1898年(明治31年)、日本美術院、創立】
岡倉覚三(天心)が東京美術学校を排斥されて辞職した際に、自主的に連座して辞職した美術家達(橋本雅邦、六角紫水、横山大観、下村観山、寺崎広業、小堀鞆音、菱田春草、西郷孤月)が結成。谷中大泉寺にて。
省定は、明治30年代以降、美術展覧会、美術団体に参加せず、市井の画家として活動を行う。明治40年代からは高い画料で仕事をした、弟子をとらず、注文に応じて制作活動を行った。大正7年(1918)68歳で亡くなる。
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展示作品の一部
渡辺省亭「牡丹に蝶の図」1893(明治26)年 絹本着色 一幅 個人蔵
渡辺省亭「百舌鳥に蜘蛛図(花鳥魚鰕画冊)」絹本着色 一面(全二十一面のうち) メトロポリタン美術館
渡辺省亭「牡丹に雛図(花鳥魚鰕画冊)」絹本着色 一面(全二十一面のうち) メトロポリタン美術館
渡辺省亭「雪中鴛鴦之図」1909年 絹本着色 142.0×78.0cm
渡辺省亭「龍頭観音」1879(明治12)年
渡辺省亭「春野鳩之図」絹本着色、一幅、加島美術館
渡辺省亭「鳥図(枝にとまる鳥)」1878(明治11)年/紙本淡彩/一面、クラーク美術館 Clark Art Institute. clarkart. Edu エドガー・ドガ旧蔵品「鳥図」(為ドガース君 省亭席画)
渡辺省亭「花鳥魚鰕画冊」メトロポリタン美術館所蔵
渡辺省亭「七美人之図」絹本着色、一幅、クラウス・F・ナウマンコレクション
箱書きに「七美人之図」と題するが、この画題がいわゆる竹林七賢を意識していることは明白である。竹林に隠棲(いんせい)した七人の賢者を描く、室町時代以来定番の、水墨画の画題。省亭は古典をしっかり踏まえながら、最高の画技をもって、このような大作を描いた。
渡辺省亭《四季江戸名所(夏 不忍池蓮)》(部分) 絹本着色 四幅のうち 個人蔵
【花鳥画】赤坂迎賓館内部を飾る七宝額の原画を省亭が担当し、濤川惣助が無線七宝で拵えた。
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参考文献
「渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-」小学館、2021
*山下裕二氏、古田亮氏「渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-」広報事務局プレスリリース
「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」東京都美術館・・・世に背を向け道を探求する、孤高の藝術家
https://bit.ly/2BUy4rl
「The UKIYO-E 2020 ─ 日本三大浮世絵コレクション」東京都美術館・・・浮き世の遊宴と享楽と美女
https://bit.ly/30JCdd2

渡辺省亭展、欧米を魅了した花鳥画・・・花の盛りを過ぎ、風が吹き、花びらが零れ落ちる「牡丹に蝶の図」

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渡辺省亭 欧米を魅了した花鳥画、東京藝大美術館、3月27日(土)~5月23日(日)
https://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2020/seitei/seitei_ja.htm
愛知の岡崎市美術博物館、5月29日(土)から7月11日(日)まで
静岡の佐野美術館、7月17日(土)から8月29日(日)まで

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