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2019年9月14日 (土)

コートールド美術館展、魅惑の印象派・・・「フォリー=ベルジェールのバー」、鏡の中の世界

Courtauld201909
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』191回
大風が吹き荒れ嵐が去った朝、銀杏の実が落下して散り敷いた広場、森を歩いて美術館に行く。
【藝術家と運命との戦い】マネは「草上の昼食」「オランピア」で革新を起し、世間の無理解と批判に苦しみ、1880年から病苦と戦い、最後の作品を描き、51歳で死す。1890年から死後の名声が始まる。
思想は悲しみと苦しみから生まれる。思想と藝術を生みだすのは美的活動ではない。この敵意に満ちた奇妙な世界と我々の間を取り次ぐ、魔術である。敵との闘争における武器である。思想家は人生の戦いにどう挑み、逆襲するのか。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
――
エドゥアール・ マネは、周密精到な写実主義画家だが、1853年、【ヴェネツィア、フィレンツェへ旅】し、ヴェネツィア派やスペインの巨匠の作品を研究した。「草上の昼食」(1862–1863)「オランピア」(1865)によって、伝統的な絵画の約束事を破る、絵画界にスキャンダルを巻き起こした。ティツィアーノ『田園の合奏』1511『ウルビーノのヴィーナス』1538を研究、摸写した成果であった。モデルの女性は、ヴィクトリーヌ・ムーランである。
マネは『オランピア』への批判に意気消沈、ブリュッセルにいたボードレールに宛て手紙を書いた。8月から【スペインへ旅】をした。プラド美術館に行きベラスケスを研究した。
印象派グループ展への参加を拒絶したが、モネとの交流は続いた。1880年から病苦と戦い、「フォリー=ベルジェールのバー」1882を描き、翌年、左足を切断したが、死亡した。
【「フォリー=ベルジェールのバー」1882】エドゥアール・ マネ(1832-1883)、50歳、最晩年の作品。この作品を完成した翌年にマネは死去した。
フォリー・ベルジェールは、1869年にオープンしたミュージックホール。マネは、ドガと同様、富裕層の出身で父は法務官僚であった。
バーメイドは娼婦でもあった。ギ・ド・モーパッサン(1850-1893)『ベラ・ミ』は、バーメイドのことを「酒と愛の売人」と表現した。マネの売春婦の比喩である。「草上の昼食」(1862–1863)「オランピア」(1865)でも見られる画家活動初期からの一貫した表現。フォリー・ベルジェール劇場は、売春婦を買う場所でも有名だった。ドガ「エトワール」(1876-77)の踊り子も娼婦の暗喩である。
【鏡の中の世界】鏡の前に、バーメイドの女性が立ち、取り仕切っているように見える。左右にシャンパンやビール。後ろには鏡があり、シャンデリアの下で客が飲食している店内の鏡像がひろがる。
画面のほとんどすべては鏡像の中である。観客席のなかに、マネの恋人、メリー・ローランが描かれている。
鏡の前に、孤立する暗鬱な表情のバーメイド。モデルは、シュゾンというウェイトレス。彼女をモデルにアトリエで描かれた。鏡の前に、紳士とバーメイド、二人は対話していない。鑑賞者はバーメイドの正面ではなく、右側に立っており、バーメイドと対面している。
【「ラス・メニーナス」1656】マネは画家ディエゴ・ベラスケスを尊敬しており、ベラスケスの「ラス・メニーナス(女官たち)」1656年作を基盤にした作品と解釈される。【『ラス・メニーナス』1656】フェリペ4世のマドリード宮殿の画室。5歳のマルガリータ王女。彼女を取り囲む、お付きの女官、侍女、目付役、2人の小人と1匹の犬。背後に、大きなカンバスに向かうベラスケス。ベラスケスの視線は、絵画の空間を超えて、絵の鑑賞者自身の立ち位置の方向に向けられる。背景には鏡がかかり、王と王妃の上半身が映っている。王と王妃は、鑑賞者と同じ位置にいる。画中の人は、鑑賞者に向かって注意を向け、幾人かが互いに交流している。
【藝術家と運命との戦い】藝術家は運命と戦う。藝術家は運命に苦悩する。運命との戦いの中から藝術は生まれる。藝術家は、運命の女と出会う。運命の恋人は女神である。運命の愛から、藝術は生まれる。
【思想家と運命との戦い】思想と藝術を生みだすのは美的活動ではない。この敵意に満ちた奇妙な世界と我々の間を取り次ぐ、魔術である。敵との闘争における武器である。思想家は人生の戦いにどう挑み、逆襲するのか。思想家の戦いは美のための戦いである。思想と藝術は悩める人の魂を癒す音楽である。醜悪な敵との戦い。思想は悲しみと苦しみから生まれる。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
大久保正雄『藝術家と運命との戦い、運命の女』
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展示作品の一部
エドゥアール・ マネ「フォリー=ベルジェールのバー」(1882)
エドゥアール・ マネ 「草上の昼食」(1863年頃)
ピエール=オーギュスト・ルノワール「桟敷席」1874年
ポール・セザンヌ「カード遊びをする人々」1892-96年頃
ポール・ゴーガン「ネヴァーモア」1897年。エドガー・ポー『大烏』に想を得た、第2次タヒチ滞在期の作品。
ポール・ゴーガン「テ・レリオワ」1897年。
ジョルジュ・スーラ「クールプヴォワの橋」1887。点描技法を用いた史上最初の作品。
ドガ「舞台上の二人の踊り子」1874年
ドガ「足の裏側をみる踊り子」ブロンズ
ゴッホ「花咲く桃の木々」1889
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参考文献
三浦篤「≪≪フォリー=ベルジェールのバー」をめぐる考察」『コートールド美術館展、魅惑の印象派展』図録
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
エドガー・ドガ『エトワール』、一瞬の中にある永遠の美・・・孤独な藝術家
https://bit.ly/2QZZS3s
「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」・・・光の画家たちの光と影
http://bit.ly/2oiNKhb
「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」・・・フェリペ4世と宮廷画家ベラスケス
http://bit.ly/2Ho8bR0 
【藝術と魔術】藝術は悲しみと苦しみから生まれる。絵を描くのは美的活動ではない。この敵意に満ちた奇妙な世界と我々の間を取り次ぐ、一種の魔術なのだ。敵との闘争における武器なのだ。いかなる創造活動も、はじめは破壊活動だ。パブロ・ピカソ
孤高の思想家と藝術家の苦悩、孫崎享×大久保正雄『藝術対談、美と復讐』
https://bit.ly/2AxsN84
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ロンドンにあるコートールド美術館のコレクションから、印象派・ポスト印象派の作品を紹介します。実業家サミュエル・コートールドが収集したコレクションを核に1932年に設立された同館は、美術史や保存修復において世界有数の研究機関であるコートールド美術研究所の展示施設です。本展覧会では、その研究機関としての側面にも注目し、画家の語った言葉や同時代の状況、制作の背景、科学調査により明らかになった制作の過程なども紹介し、作品を読み解いていきます。
 日本の風景のようだと語られたファン・ゴッホによるアルルの風景《花咲く桃の木々》、19世紀後半の近代都市パリの風俗を映すルノワールの《桟敷席》やマネの《フォリー=ベルジェールのバー》、科学調査が作品の秘密を解き明かしたゴーガンの《ネヴァーモア》やモディリアーニの《裸婦》などをはじめ、選りすぐりの絵画・彫刻約60点を展示します。
https://www.tobikan.jp/exhibition/2019_courtauld.html
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★コートールド美術館展、魅惑の印象派、東京都美術館、9月10日(火)~12月15日(日)
愛知県美術館、2020年1月3日(金)~3月15日(日)
神戸市美術館、2020年3月28日(土)~6月21日(日)

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