孫崎享『幕末史の謎、理念なき国家』孫崎享×大久保正雄『国家権力の謎』第12回
孫崎享×大久保正雄『国家権力の謎』第12回
秋の午後、孫崎氏の家で歓談した。孫崎享先生の新著『アーネスト・サトウと倒幕の時代』の構想について、質疑応答した。主な論点は次の点である。
1「理念なき国家、明治の嘘」尊王攘夷は権力を横領するための嘘。権力の不正な略奪。「孝明天皇は毒殺された」。2「徴兵令(1873年)は、憲法(1889年公布)と議会制度の前に成立した。理念なき国家。3「侍は権力者に仕えるシステム」奴隷のように支配者に仕えるシステムは、江戸時代に構築されていた。
1、幕末、明治の真相について
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孫崎享『アーネスト・サトウと倒幕の時代』2018/12/5刊行予定。
日本が焦土になることを危惧して、統幕から和平交渉へ転換した英国外交官。勝・西郷会談を英国外交官アーネスト・サトウは演出した。
「噂によれば、天皇陛下は天然痘にかかって死んだという事だが、数年後、その間の消息によく通じているある日本人が私 (アーネスト・サトウ)に確言したところによれば、天皇陛下は毒殺されたのだという。この天皇陛下は、外国人に対していかなる譲歩を行う事にも、断固として反対してきた。」『一外交官の見た明治維新』
【坂本龍馬暗殺】
坂本龍馬を誰が殺したのか、薩長側であったか否かは、明治政府の性格の理解に非常に重要。龍馬は天皇の下に慶喜を含むオールジャパン的なものを志向。この龍馬暗殺となれば薩長側は単に政権獲得だけを目的の性格となる。だから幕府側が殺害というバージョンを必要とした。新選組という構図が出る。(孫崎享2018年11月12日)
大政奉還の後、龍馬は天皇の下、徳川慶喜をも含めたオールジャパン構想の提唱に向かう。それを取り上げたのが山内容堂。だが山内容堂は会議で慶喜を入れることを主張するが、西郷隆盛の脅し(間接的)でこの主張を止める。こうした流れの中で龍馬は殺されている。
「理念なき国家、明治の嘘」うそつき、詐欺師集団
うそつき集団、詐欺師集団が権力を横領した。「尊王攘夷」という人々、攘夷と言いながら、英国と共謀した討幕派。薩摩、長州は英国と共謀した。
「孝明天皇は毒殺された」
「天皇の死因については、表面上疱瘡で病死ということになっているが、毒殺の疑いもあり、長い間維新史上の謎とされてきた。犯人は岩倉具視である。」佐々木克『戊辰戦争』中公新書P8-9。犯人は岩倉具視、大久保利通。幼少の明治天皇を操った。
「近年、当時孝明天皇の主治医であった伊良子光順の残した日記が一部公にされ、光順の子孫である医師伊良子光孝氏によって、孝明天皇の死は、光順日記で見る限り明らかに「急性毒物中毒の症状である」と断定された。やはり毒殺であった。
犯人について伊良子氏はなにも言及していない。しかし、当時の政治情況を考えれば、自然と犯人の姿は浮かびあがってくる。洛北に幽居中ながら、王政復古の実現を熱望して策をめぐらしている岩倉にとって、もっとも邪魔に思える眼の前にふさがっている厚い壁は、――親幕派の頂点孝明天皇その人であったはずである。―岩倉自身は朝廷に近づけなかったが――大久保は――公卿の間にもくい込み、朝廷につながるルートを持っていた。――直接手をくださずとも、孝明天皇暗殺の黒幕が誰であったか、もはや明らかであろう。」
この本は7月末脱稿。当初社長さん歴史ブームだから早く出しましょう、二、三週間で刊行と言われてましたが、伊藤博文自身の暗殺行為、孝明天皇暗殺、龍馬暗殺、江戸城引き渡しへの英国関与等論議呼ぶテーマを含み著者が著者だけに右翼が狙ってくると、一時は4人がかりで原稿チェック。(孫崎 享 @magosaki_ukeru 11月13日)
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2、【理念なき国家、明治】
孫崎享
明治政府は、薩長による権力の奪取であり、市民による統治の実現ではない。「徴兵令(1873年)は、憲法(1889年公布)も議会制度の前に成立した。
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大久保正雄
フランス革命では、バスティーユ牢獄襲撃1789年7月14日の1か月後に、『人権宣言』が出される。『人権宣言』1789年8月26日。『人間と市民の権利宣言』、自由、平等、圧制への抵抗権を自然権とする。その維持を統治の目的とする。国民主権、法の支配、権力分立、私有財産の不可侵、が規定された。
『1791年憲法』9月3日、「徴兵制の実施」1791年2月、3月10日、実施。
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3、【奴隷階級】
孫崎享氏は、奴隷のように支配者に仕えるシステムは、江戸時代に構築されていた。と考える。*ハーバート・ノーマン『忘れられた思想家 -安藤昌益のこと』
侍とは、権力に仕える者の意味である。
【奴隷階級】「あらゆる人間は、いかなる時代におけるのと同じく、現在でも奴隷と自由人に分かれる。自分の一日の三分の二を自己のために持っていない者は奴隷である。」 ニーチェ『人間的な、あまりに人間的な』
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4、【平安時代は暴力装置なき国家】
清盛は、後白河に泣きつかれたために「朝廷の暴力装置』としての当然の役目を果たした。『歴史に裏切られた武士 平清盛 - 第 1 巻』
暴力装置の政治権力の中での正当性を確立する道を、みずから閉ざさせものとするという、重要な課題 ・・・ 保元,平治の兵火によって生れるまで、平安時代には見られなかった、第二は、政治目的を達するのに赤裸々に暴力に依拠することがない。『明月記研究 6号(2001年11月): 記録と文学』
【西面の武士】鎌倉時代、上皇に仕え、身辺の警衛、奉仕などにあたった武家集団。1200年ごろ、後鳥羽上皇が鎌倉幕府の軍事力に対抗して結成したとされる。倒幕準備のために創設したとする説の他、武芸を好んだ 貴族。
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★参考文献
★アーネスト・サトウ『一外交官の見た明治維新』(上下)(坂田精一訳、岩波文庫、1960年)
★ノーマン「徴兵令(1873年)は、憲法(1889年公布)も議員制度の前に成立。ハーバート・ノーマン『日本の兵士と農民』(岩波書店、一九五八年)
ハーバート・ノーマン『忘れられた思想家 -安藤昌益のこと』(岩波新書全2巻1950年)
★ジョセフ・ニューマン 陸海軍は国民に対しては責任を負わない。天皇にのみ忠誠。軍は自分たち以外誰に対しても責任を負わない。
ジョセフ・ニューマン『グッドバイ・ジャパン』
☆指導者層の「サムライ化」。新倫理の中心部分は、忠誠の観念を一層強調し、儒教的用語で再構築、愛国心や法の遵守。S.N.アイゼンシュタット『日本比較文明論的考察』岩波書店2004
★佐々木克『戊辰戦争』中公新書P8-9。
半藤一利『幕末史』平凡社
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孤高の思想家と藝術家の苦悩、孫崎享×大久保正雄『藝術対談、美と復讐』
https://bit.ly/2AxsN84
検察は権力の奴隷、マスコミは追及せず。独裁政権、止めるシステムなし。孫崎享
孫崎享×大久保正雄『国家権力の謎』第10回
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日本国家、ファシズム14の兆候
孫崎享×大久保正雄『国家権力の謎』第11回
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独裁政権、民主主義は崩壊。ファシズムの14の兆候。うそ、公文書改竄、隠蔽、最高権力者。権力に隷従、盲従する官僚の群れ
孫崎享×大久保正雄『国際政治の舞台裏 核の傘は存在するのか』ソフィア文化芸術ネットワーク
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2018年11月8日
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