「名作誕生、つながる日本美術」東京国立博物館・・・美の系図、創造のドラマ
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第145回
春爛漫、百花繚乱、紫の躑躅咲く森を歩いて、花の匂い漂う、夕暮れの博物館に行く。煌めく宗達筆「扇面散屏風」、雪舟筆「四季花鳥図屛風」、超絶技巧と色彩の魔術の若冲筆「雪梅雄鶏図」、等伯筆「山水松林架橋図襖」。藝術家の至高の美の空間が蘇る。
奈良時代の一木彫像から、雪舟、宗達、若冲、等伯、光琳、顔輝、岸田劉生まで。
絢爛豪華な美の系図。空前絶後、前代未聞の比較展示。卓越した巨匠の空間。中国、日本の美の変奏と系譜。「夫レ美術ハ国ノ精華ナリ」。
藝術はなぜ、創造されるのか。なぜ生み出されたのか。死に至るまでつづけられる創作の秘密。藝術家の格闘のドラマ。巨匠たちの、剽窃、模倣、継承、変形、兆戦、創造への果てしない格闘。
雪舟の部屋、宗達の部屋、若冲の部屋。充溢した濃密な巨匠の空間に佇む。異界の空間。藝術は、異界への扉。創作の秘密を解き明かす、巨匠と巨匠の美の系図。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
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若冲展示室で佐藤康宏氏に会う。「若冲は、努力家、天才ではない。文正、陳伯沖を研究した」「名作はたんに天才によって創造されるのではない。巨匠の傑作は天才によって構築されるのではない」
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雪舟等楊は、玉㵎を学び「破墨山水図」を描き、呂紀を学び「四季花鳥図」を描く。狩野元信は雪舟等楊筆と呂紀を学び「四季花鳥図」16世紀を描く。
俵屋宗達「扇面散屏風」は「平治物語絵巻」六波羅合戦巻断簡を引用、再構成して作られている。宗達「扇面散屏風」、八 曲一双、金屏風に48の扇、一双96の扇が散らされている。平治物語絵巻(13世紀)の戦闘場面、風神図、雷神図の扇がある。17 世紀の空間が輝き蘇る。
伊藤若冲筆は、文正「鳴鶴図」、陳伯沖「松上双鶴図」を研究して「白鶴図」を描いた。
長谷川等伯は、能阿弥筆「三保松原図」、自作「山水松林架橋図襖」をへて、「松林図屛風」に到達する。
雪舟絵画は、15世紀から18世紀へ展開する。雪舟「天橋立図、雪舟「四季山水図」15世紀、雪舟「倣夏珪山水図」、夏珪「山水図」、雪舟等楊筆「富士三保清見寺図」15世紀、狩野山雪「富士三保松原図屏風」17世紀、曽我蕭白「富士三保松原図屏風」18世紀。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
大久保正雄『藝術家と運命との戦い、運命の女』
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【雪舟、47歳の時、遣明船で明に渡る】雪舟(等楊)は備中国に生まれ、京都相国寺で修行した後、大内氏の庇護のもと周防国に移る。山口に初めて来たのはまだ拙宗を号としていた1455年頃、28代大内教弘の時代。雪舟47歳の時、1467年、大内氏の遣明船に乗り、念願の明に渡る。明で画の勉強を終えた雪舟は、1469年に帰国し日本各地を転々とした。1483年再び山口に戻り、雲谷庵に定住。創作活動にすべてを注ぎ、1486年、最高傑作「山水長巻」を山口で完成。1506年87歳でこの世を去る。画風は、弟子達に受け継がれ、「雲谷派」と呼ばれる。【雪舟】(応永27年( 1420年)—永正3年8月8日( 1506年))岡山県総社市の宝福寺での小僧時代、涙で鼠を描いた逸話が有名である。*狩野永納『本朝画史』(1693年)。雪舟は、玉㵎を模倣して「破墨山水図」(室町時代1495)を描く。「破墨山水図」は、雪舟が1495年、76歳に制作し弟子の如水宗淵に与えた山水画。東京国立博物館所蔵。雪舟自身の長文の自題がある。自題の中に「破墨の法」を明で学んだと述べているのでこの名があるが技法的には「溌墨山水」。「破墨山水図」自序の中で、雪舟は、かつて中国へ渡り、李在と長有声に画を学んだ、日本では如拙、周文の画を受け継ぐことなどを述べ、如水宗淵のために画学の系譜を明らかにする。
【俵屋宗達、扇絵】17世紀は俵屋宗達とその工房の活躍期。仮名草子「竹斎」元和年間(1615~24)に記された俵屋は、扇絵制作を得意とする絵屋であり、宗達自身 による扇面画も複数残る。宗達や俵屋工房による扇面画、特に扇面屏風類の現存遺例、醍醐寺『扇面貼交屏風』二曲一双が有名である。
【本阿弥光悦と宗達】俵屋宗達は、本阿弥光悦と同時代人。*光悦(永禄元年(1558年)生まれ、寛永14年(1637年)2月3日没)。1602年(光悦44歳)、光悦は厳島神社の寺宝『平家納経』の修理にあたって宗達をチームに加える。50代になった光悦は俵屋宗達との「合作」に取り組み始める。才能と才能の共同制作、『鶴下絵三十六歌仙和歌巻』。光悦は時の将軍徳川家光に「天下の重宝」と言わしめた書の達人。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
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★展示作品の一部
国宝「普賢菩薩騎象像」平安時代・12世紀 大倉集古館蔵
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雪舟等楊筆「倣玉㵎山水図」室町時代・15世紀 岡山県立美術館蔵
雪舟等楊筆「倣夏珪山水図」室町時代・15世紀 山口県立美術館蔵
雪舟等楊筆 国宝「破墨山水図」室町時代・15世紀、東京国立博物館蔵
雪舟等楊筆「四季花鳥図屛風」室町時代・15世紀、京都国立博物館蔵
呂紀筆「四季花鳥図」明時代、15-16世紀
狩野元信「四季花鳥図」室町時代・16世紀
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「平治物語絵巻」六波羅合戦巻断簡 1幅、13世紀、東京国立博物館蔵
俵屋宗達「扇面散屏風」17世紀 三の丸尚蔵館
伝俵屋宗達「扇面貼交屛風」江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵
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文正「鳴鶴図」元明時代、14世紀、相国寺
陳伯沖「松上双鶴図」明時代、16世紀、大雪院
狩野探幽「波濤飛鶴図」江戸時代・17世紀1654年、 京都国立博物館蔵
伊藤若冲筆「白鶴図」江戸時代・18世紀
伊藤若冲筆「雪梅雄鶏図」江戸時代・18世紀 京都・両足院蔵
伊藤若冲筆「仙人掌群鶏図襖」江戸時代・18世紀 大阪・西福寺蔵
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能阿弥筆「三保松原図」室町時代・15—16世紀、
長谷川等伯筆「山水松林架橋図襖」4面、安土桃山時代・天正17年1589年 樂美術館蔵
長谷川等伯筆 国宝「松林図屛風」安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館蔵
菱川師宣筆「見返り美人図」17世紀東京国立博物館蔵
顔輝「寒山拾得図」元時代14世紀
岸田劉生「野童女」1922
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後期展示
雪舟「天橋立図、雪舟「四季山水図」15世紀、雪舟「倣夏珪山水図」、夏珪「山水図」、雪舟等楊筆「富士三保清見寺図」15世紀、狩野山雪「富士三保松原図屏風」17世紀、曽我蕭白「富士三保松原図屏風」18世紀
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参考文献
若冲展、東京都美術館・・・『動植綵絵』、妖気漂う美の世界
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-2b1d.html
「若冲と蕪村」・・・黄昏の美術館
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/post-7705.html
「京都―洛中洛外図と障壁画の美」・・・幻の花の都
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-97ee.html
長谷川等伯展・・・荒寥たる自然と生命の美
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-33b2.html
「大琳派展―継承と変奏」東京国立博物館・・・絢爛たる装飾藝術
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-c300.html
『没後500年特別展「雪舟」』(図録、東京国立博物館2002年)
「大琳派展―継承と変奏」東京国立博物館2008
「京都―洛中洛外図と障壁画の美」東京国立博物館2013
「長谷川等伯展」東京国立博物館2010
生誕300年記念「若冲展」東京都美術館2016
「ボストン美術館 日本美術の至宝」東京国立博物館2012
ボストン美術館肉筆浮世絵展「江戸の誘惑」江戸東京博物館、2006年
「北斎展」東京国立博物館、2005年10月25日(火)~12月4日(日)
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=476
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★創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年「名作誕生、つながる日本美術」
東京国立博物館4月13日-5月27日
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1889
http://meisaku2018.jp/index.html
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