ルノワール『イレーヌ』・・・非情な運命が襲いかかる、波瀾に立ち向かう
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第142回
一枚の絵画に、非情な運命が襲いかかる、波瀾に立ち向かう人。藝術家は運命と戦う。運命の女があらわれる。黄昏時、美しい女神が美しい魂を救う。
オーギュスト・ルノワール『イレーヌ』(Pierre-Auguste Renoir Portrait d'Irène Cahen d'Anvers)1880)。1880年夏、別邸の庭でモデルをつとめた8歳のイレーヌ。可憐な8歳の美少女、紅の頬、睫毛が長く憂いを帯びた表情。「絵画史上最強の美少女」。藝術家とモデルと富豪の父と娘。
ルノワールは1877年「第3回印象派展」を最後に、印象派を離れて、サロンに移る。富裕層の出資者を探し始める。銀行家、ルイ・カーン・ダンヴェール伯爵から三人姉妹の得の注文を受ける。ルノワールはこの時39歳、39年後、1919年、78歳で死ぬ。
オーギュスト・ルノワール『イレーヌ』(1880)。イレーヌに非情な運命が襲いかかる。イレーヌは二度の結婚と離婚。第一次世界大戦で子息は撃墜死。娘ベアトリスは一家4人ナチスのユダヤ迫害で死亡。ナチスの美術品略奪、印象派好きのゲーリングの手中に。1949年77歳の時、イレーヌはルノワール『イレーヌ』を競売に出しビュールレの手に渡る。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
大久保正雄『藝術と運命との戦い、運命の女』
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1880年夏、別邸の庭でモデルをつとめた8歳の『イレーヌ』(1880)は、可憐な8歳の美少女、紅の頬、睫毛が長く憂いを帯びた表情。「絵画史上最強の美少女」。注文主は、富裕なユダヤ人銀行家、ルイ・カーン・ダンヴェール伯爵。
イレーヌは、19歳でカモンド伯イザクと結婚。10年ほどで破綻し、30歳でサンピエーリ伯と再婚、20年ほど後に二度目の離婚。息子ニッシムは長じてフランス空軍のパイロットとなり、第一次世界大戦末期1917年、25歳でロレーヌ地方において撃墜死。
1894年に生まれた娘ベアトリスはレオン・ライナッハの妻となり、二人の子に恵まれるが、一家4人ともナチスのユダヤ迫害によって捕らえられ、アウシュビッツほかの収容所で全員命を落とす。
ナチスはフランスのユダヤ人家庭から美術品を略奪、ジュ・ド・ボーム美術館に集めた。『イレーヌ』を描いた絵はジュ・ド・ボーム美術館に移され、一時期は印象派美術好きのゲーリングの手もとにあった。1946年になって絵はイレーヌ本人のもとに戻された。彼女はすでに74歳。その3年後に競売にかけられ、ビュールレによって落札された。
★参考文献
日曜美術館「イレーヌ ルノワールの名画がたどった140年」2018年3月4日NHK
「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」図録
国立新美術館、2018年2月14日~5月7日
九州国立博物館、2018年5月19日~ 7月16日
名古屋市美術館、2018年7月28日~ 9月24日
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*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」国立新美術館・・・光の画家たちの光と影
http://bit.ly/2oiNKhb
http://platonacademy.cocolog-nifty.com/blog/2018/02/post-9927.html
http://odyssey2000.cocolog-nifty.com/blog/2018/02/post-9927.html
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