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2017年10月14日 (土)

怖い絵展、上野の森美術館・・・異界と幻視、崇高の風景

Kowaie20171007大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第127回
処刑された若き女王、魔女、妖精、夢魔、血まみれメアリー、切り裂きジャック、崇高な城の廃墟。19世紀エリザベス朝の大英帝国の妖精画家たちの幻想。中野京子『怖い絵』(2007)にもとずく美術展。神話と聖書、悪魔、地獄、怪物、異界と幻視、崇高の風景。チャールズ・シムズ『そして妖精たちは服をもって逃げた』(1918)には、画家の運命が秘められている。
陰惨、悲惨、怪奇な絵画に満ちた不気味な美術館。恐怖と怪奇を好む女性が雲霞のごとく集まる。魑魅魍魎に取りつかれた少女、幻想界に生きる異界マダムが蝟集する。病んだ女性は、嫉妬、愛憎、残酷、恐怖を好む。美内すずえ『ガラスの仮面』1976、秋吉理香子『ジゼル』2015、塩野七生『チェーザレ・ボルジア優雅なる冷酷』1970、『ヴェルサイユのばら』1978。
――
ポール・ドラローシュ「レディ・ジェーン・グレイの処刑」(1833)
黒い闇、ジェーンの若々しい白い肌、サテンの純白ドレス。白と黒の対比。床には血を吸うために敷かれた藁。布で目隠しをされたジェーン、斬首台に導く司祭。右側に斧を手に立つ死刑執行人、左側に侍女らが泣く。
16歳で断頭台に散った9日間の若き女王レディ・ジェーン・グレイ。エリザベス1世が即位する4年前1554年2月。ロンドン塔に幽閉されていた「前女王」が処刑された。反逆罪で投獄され、カトリックへの改宗を拒んだため7カ月後、ロンドン塔の断頭台に散った。16歳4か月。
ヘンリー8世の姪の娘ジェーンは、父と舅の野心の犠牲となって女王に即位させられ、権力闘争と宗教対立の歴史の荒波に翻弄される。メアリー1世死後、カトリック復帰運動は沈下し英国国教会は国家宗教として確立。
ブラッディ・マリー、血まみれメアリー
イングランド女王メアリー1世(1516~58年)の異名である。カトリックのメアリーは300人のプロテスタントを処刑した.。「血まみれメアリー」と呼ばれた。即位後、最初に処刑したのが自分より先に「イングランド初の女王」を宣言したジェーン・グレイ(1537~54年)。
――
美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。
美しい夕暮れ。美しい魂に、幸運の女神が舞い降りる。美しい守護霊が救う。美しい魂は、輝く天の仕事をなす。
大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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展示作品の一部
ポール・ドラローシュPaul Delaroche「レディ・ジェーン・グレイの処刑」1833
ハーバート・ジェイムズ・ドレイパーHerbert Draper「オデュッセウスとセイレーン」1910
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスJohn William Waterhouse「オデュッセウスに杯を差し出すキルケー」1891
チャールズ・シムズ『そして妖精たちは服をもって逃げた』1918
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展示は「神話と聖書」「悪魔、地獄、怪物」「異界と幻視」「現実」「崇高の風景」「歴史」の6つのテーマで構成され、視覚的な怖さだけではない様々なタイプの「恐怖」を表現した作品が並ぶ。さらに、一部の作品の横には「中野京子’s eye」として作品を読み解くためのヒントも記されており、より想像力を広げて、作品が持つ恐怖の世界を味わうことができる。女優の吉田羊とのトークセッションで「なぜ『恐怖』をテーマに選んだのか」という吉田の問いに対し、中野は「恐怖は動物のDNAに刻み込まれたもので、恐怖があることで生き延びてきた。だから様々な恐怖のバリエーションが絵画に表現されている」と語った。
『美術手帖』恐怖を切り口に名画を読み解く「怖い絵」展が東京へ - 美術手帖
https://bijutsutecho.com/news/8015/
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怖い絵展、上野の森美術館2017年10月7日(土)~12月17日(日
http://www.kowaie.com/sakuhin.html

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