アルチンボルト展・・・ハプスブルク家の皇帝の奇妙な趣味
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第122回
ハプスブルク家の神聖ローマ皇帝の奇妙な趣味、16世紀の世界の支配者の奇妙な趣味。イタリア、マニエリスムの画家、アルチンボルド。『血みどろのハプスブルク史』の陰鬱な王の趣味。
アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo,1526-1593年)は、30代の時、1562年、ハプスブルク家の宮廷画家となり、フェルディナント1世、マクシミリアン2世、ルドルフ2世の3代の神聖ローマ皇帝に仕え、後に、貴族に列せられた。寓意とシンボルをちりばめた「四季」「四大元素」(大気、火、大地、水)は、世界の支配者、神聖ローマ皇帝を讃えることが目的だった。
世界の支配者たるハプスブルク家の神聖ローマ皇帝の奇妙な趣味。偏奇な館に閉じこもる皇帝の密室。16世紀、聖職者の欺瞞が暴かれるとき、何を探求したのか。マクシミリアン1世(1493年—1519年)から始まるハプスブルク帝国は、醜悪な趣味に陥る。世界の支配者たるハプスブルク家の神聖ローマ皇帝の悪趣味。金と地位に溺れる権力者の悪趣味。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
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展示作品の一部
ジュゼッペ・アルチンボルド「春」1563年 油彩/板、マドリード、王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館
ジュゼッペ・アルチンボルド「夏」1572年 油彩/カンヴァス、デンバー美術館
ジュゼッペ・アルチンボルド「秋」1572年 油彩/カンヴァス、デンバー美術館
ジュゼッペ・アルチンボルド「冬」1563年 油彩/板、ウィーン美術史美術館
アルチンボルド「四大元素」(大気、火、大地、水)、1566年、ウィーン美術史美術館、リヒテンシュタイン侯爵家コレクション
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ジュゼッペ・アルチンボルド(1526-1593年)は、16世紀後半にウィーンとプラハのハプスブルク家の宮廷で活躍した、イタリア・ミラノ生まれの画家です。自然科学に深い関心を示したマクシミリアン2世、稀代の芸術愛好家として知られるルドルフ2世という神聖ローマ皇帝たちに寵愛されたアルチンボルドは、歴史上でもひときわ異彩を放つ、宮廷の演出家でした。そんな「アルチンボルド」の名は何よりも、果物や野菜、魚や書物といったモティーフを思いがけないかたちで組み合わせた、寓意的な肖像画の数々によって広く記憶されています。奇想と知、驚異と論理とが分かちがたく交錯するそれらの絵画は、暗号のようにして豊かな絵解きを誘い、20世紀のシュルレアリスム以後のアーティストたちにも、大きな刺激を与えました。
本展は、世界各地の主要美術館が所蔵するアルチンボルドの油彩約10点や素描を中心に、およそ100点の出品作品により、この画家のイメージ世界の生成の秘密に迫り、同時代の文脈の中に彼の芸術を位置づけ直す試みです。日本で初めて、アルチンボルドのユーモアある知略の芸術を本格的にご紹介するこの機会を、ご期待ください。国立西洋美術館
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参考文献
ハプスブルク帝国年代記 王女マルガリータ、帝国の美と花
http://odyssey2000.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-d0b2.html
スペイン・ハプスブルグ家、太陽の沈まぬ帝国、黄金の世紀
http://odyssey2000.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-eb5a.html
ハプスブルク家 皇妃エリザベート、バイエルンの薔薇
http://odyssey2000.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-f025.html
ハプスブルク帝国、ヴェラスケス、黄昏の光芒
http://odyssey2000.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/post-3207.html
ハプスブルク家 マリー・アントワネット 革命に散る
http://odyssey2000.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-7961.html
マクシミリアン1世(神聖ローマ皇帝1493年—1519年)
ベルギー、奇想の系譜、ザ・ミュージアム・・・怪奇と幻想うごめくフランドル
http://platonacademy.cocolog-nifty.com/blog/2017/08/post-09fb.html
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★アルチンボルト展、国立西洋美術館
2017年6月20日(火)~2017年9月24日(日)
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2017arcimboldo.html
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