シャセリオー展、国立西洋美術館・・・アポロンとダフネ、泉のほとりで眠るニンフ
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
春よみがえる森、枝垂れ梅が満開の森を歩いて、美術館に行く。
シェイクスピア劇の愛と嫉妬、憎悪、猜疑心、人間の暗い情念、苦悩、亡霊、魔女、幻影に、ロマン主義の藝術家たちは題材を得る。
シャセリオーは、詩人たちを愛し、シェイクスピア、バイロンを愛読した。ギリシア神話に霊感をうけた。ラファエロを崇めるアングルとは、方向が異なる。*
『海から上がるウエヌス』(Louvre)をみた日を思い出す。
シャセリオーは、美人画に卓越した画家である。シャセリオーの絵画は、調和ある古典的世界と女性美を探求した。シャセリオーは37歳で死する夭折の画家である。
『泉のほとりで眠るニンフ』1850、『カバリュス嬢』1848、『16世紀スペイン女性の肖像』1834—50、『海から上がるウエヌス』1838,1842。
『アポロンとダフネ』1845 アポロンはダフネに恋するが、ダフネは樹木に変身して拒絶する。*オヴィディウス『変身物語』
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
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永遠を旅する哲学者は、美のイデアへ旅する。
美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。はちみつ色の夕暮れ、黄昏の丘、黄昏の森を歩き、迷宮図書館に行く。糸杉の丘、知の神殿が目覚める。
美しい魂は、輝く天の仕事をなす。美しい女神が舞い下りる。美しい守護精霊が、あなたを救う。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
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■テオドール・シャセリオー(Théodore Chassériau, 1819年9月20日 - 1856年10月8日)
テオドール・シャセリオー(Théodore Chassériau 1819-1856)。11歳でアングルに入門する。ドラクロワの影響を受け、ロマン主義の画家となり、新古典主義と融合する。『アポロンとダフネ』1845を描く。象徴主義に影響を与える。
■ギュスターブ・モロー(Gustave Moreau, 1826–1898)
シャセリオー『アポロンとダフネ』1845。この絵がギュスターブ・モローに影響を与える。37歳で早世する。ギュスターブ・モローは、美術学校を辞め、シャセリオーの近くにアトリエを構える。
ギュスターブ・モロー『アポロンとダフネ』『オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘』1865、『若者と死』1882。これらの絵画において、ギュスターブ・モローは、シャセリオーの影響が濃厚である。ギュスターブ・モロー藝術は、「詩人のテーマ」を根源としている。
★主要作品
テオドール・シャセリオー『アポロンとダフネ』1845ルーヴル美術館
テオドール・シャセリオー、『カバリュス嬢の肖像』1848年カンペール美術館
CHASSERIAU, Theodore 1819-1856. French Painter Romanticism. □Painting Data□. Apollo and Daphne. (Apollon et Daphne). 1846
Théodore Chassériau, Apollo and Daphne. (Apollon et Daphne). 1846
Théodore Chassériau,Venus Anadiomene,1842
Théodore Chassériau,Nymphe,1850
Théodore Chassériau,Portrait de Mademoiselle de Cabarrus
Théodore Chassériau,Cabarrus,1848
Théodore Chassériau , Venus Anadyomene, or Venus of the Sea ,1838
■フランスの新古典主義 ジャック=ルイ・ダヴィッド(David)、弟子たち
ダヴィッドの弟子たち、アングル(Ingres)、フランソワ・ジェラール(F.Gerard)、グロ(Grot)、ジロデ=トリオソン(Girodet de Roussy-Trioson)
荘重な様式をもとめて古典古代、ギリシァの芸術を模範とした。ナポレオン時代、英雄主義的な主題は好まれ、インペリアル様式となる。ロココ美術のあまりに甘美な装飾様式、退廃的貴族主義に対する反発から生まれた。
■イギリス文学のロマン主義文学
ウィリアム・ブレイクの詩を萌芽とし、ウィリアム・ワーズワースとサミュエル・テイラー・コールリッジ『抒情民謡集(Lyrical Ballads)』(1798年)によって始まるが保守化した。ナポレオン戦争後、ジョージ・ゴードン・バイロン、パーシー・ビッシュ・シェリー、ジョン・キーツらは先鋭化しイギリスを去ってスイス・イタリアに移り、理想主義を追求した。
■ロマン主義の画家 ロマン主義に属する画家は、スペインのゴヤ、フランスのドラクロワ、テオドール・ジェリコー、ギュスターヴ・ドレ、イギリスのウィリアム・ブレイク、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー、サミュエル・パーマー、リチャード・ダッド、イタリアのフランチェスコ・アイエツ、スイスのヨハン・ハインリヒ・フュースリー、ドイツでは山岳・廃墟をテーマにしたカスパー・ダーヴィト・フリードリヒ、フィリップ・オットー・ルンゲ、ノルウェーのヨハン・クリスチャン・ダール。日本の絵画では藤島武二、青木繁。
★参考文献
陳岡めぐみ「異国の香り テオドール・シャセリオー」『シャセリオー展図録』
澁澤龍彦「小ロマン派群像」中央公論社『悪魔のいる文学史』〔中公文庫〕
デーヴィッド・ブレイニー・ブラウン『岩波世界の美術 ロマン主義』高橋明也訳、岩波書店2004年
高階秀爾『フランス絵画史』講談社1990年
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★シャセリオー展―19世紀フランス・ロマン主義の異才、国立西洋美術館
2017年2月28日(火)〜5月28日(日)
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