大久保 正雄『旅する哲学者、美への旅、美の探求』
大久保 正雄『旅する哲学者、美への旅、美の探求』
美の本質は何か。美の根拠は何か。人はいかにして美に辿りつくことができるのか。
美を知るのは直観である。直観は一瞬で本質にたどりつく。しかし、美を知ることは美の探求の究極ではない。ソクラテスの美の究極の奥義は、何を教えるのか。ソクラテスの祈りは何を祈るのか。*
孫崎享氏の家でみた長谷川潔『森陰の道』(油彩)。昏い森陰の道のむこうに碧空がみえる。憂愁の彼方に理念がみえる。「ひとの世の旅路のなかば、気がつくと、私は真直ぐな道を見失い、暗い森に迷いこんでいた」ダンテ『神曲』。画家の心象風景。長谷川潔『ヴォルクスの村』油彩(1930)の時代の作品だろうか。この時代、画家はトレドに旅している。荒寥たる大地の果てになにをみたのか。孤高の旅人、長谷川潔。*
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クロマニオン人、古代ギリシア、ルネサンス、バロック、人類は美への旅をしてきた。
美は愛であり、愛は美である。愛の無いところに美はなく、美のないところに愛はない。
美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。*John Keats, Ode on a Grecian Urn
はちみつ色の夕暮れ、黄昏の丘、黄昏の森を歩き、迷宮図書館に行く。糸杉の丘、知の神殿が目覚める。
美しい魂は、輝く天の仕事をなす。美しい女神が舞い下りる。美しい守護精霊が、あなたを救う。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
ラスコー洞窟、古代ギリシア、ルネサンス、バロック、伊藤若冲、クラーナハ、ダリ。博物館、美術館に行くと、時の彼方から、藝術家の魂、歴史を彩る権力者、運命の美女、聖者の精神が蘇る。
絵画史をたどると、画家は死に、描かれた美女は生き、美女は死に、藝術のみが生き残る。
レオナルド『糸巻の聖母』、ボッティチェリ『書物の聖母』、カラヴァッジョ、若冲『動植綵絵』、クラーナハ『ホロフェルネスの首をもつユディト』。
【バロック、光と闇の逆転】
世界は権威を装う詐欺師に満ちている。世人は容易にだまされる。ボッシュ『いかさま師』(愚者の石の除去)プラド美術館、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール『いかさま師』ルーヴル美術館、カラヴァッジョ『女占い師』。
悪が支配するこの世界、聖なる者、美しき者は悪と戦わねばならない時がある。
カラヴァッジョ『斬首されるヨハネ』1608は、美しい聖者と醜悪な役人の対比、光と闇、聖者が犯罪者によって処刑されようとしている。光と闇、真実と虚偽の逆転。
敵将の首を斬る、美しき未亡人。カラヴァッジョ「ホロフェルネスの首を斬るユディト」1599 https://t.co/2TRjfXSHHK
【人間の美】
人間の美しさは、心の美しさである。美への旅の究極にあるのは心の美である。大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
【琳派、奇想の画家】
伊藤若冲は40歳から画業を始め、不屈の意志で『動植綵絵』(1757年から1766年)を描き、変化しつづけた。「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」ダーウィン
琳派は、200年変遷した。本阿弥光悦、俵屋宗達から、尾形光琳、尾形乾山、酒井抱一、其一。鈴木其一『夏秋図屏風』は、夏の森の百合と秋の紅葉の森、緑の木々と青い渓流が美しい。*『大琳派展』2005
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注
【天に徳を積む仕事】
困っている人を助けること。人の心を癒し豊かにすること。埋もれている才能を世に出すこと。これは小人にはできない、天人の仕事である。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
【人間性】
いかに高級な藝術、料理を楽しんでも人間性は高くならない。人を高めるのは困っている人を助けること。人の心を癒すこと、豊かにすること。
どんなに高度な知識をもっていても、人の痛みがわからない人は、存在する価値がない。
【価値】
美貌、財産、家、地位、職業、知識、この世のものはあの世に持っていくことはできない。唯一もっていくことができるものがある。それは何か。プラトンの書に隠されている。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
【ソクラテスの祈り】
旅する哲学者、ソクラテスの戦い ソクラテスの祈り
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哲学者の魂 ソクラテスの死
https://t.co/K1EiSrdg79
*大久保正雄『地中海紀行 旅する哲学者 美への旅』より
*長谷川潔(1891-1980. 12月13日)。京都国立近代美術館「生誕100年記念 長谷川潔展」( 1991 ) マニエール・ノワールの巨匠、繊細で品格高い絵画世界。
大久保 正雄2016年12月11日
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