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2016年5月

2016年5月 3日 (火)

若冲展、東京都美術館・・・『動植綵絵』、妖気漂う美の世界

20160422大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
花吹雪、花も嵐も踏み越えて、緑深い森を歩いて、美術館に行く。牡丹、躑躅の花咲く。春爛漫。花の匂い漂う森。永遠を旅する哲学者は、守護精霊の豹に導かれて、智慧の羅針盤の指す方向に、歩いていく。新緑の森を森の奥へ、白いドレスの女は森を彷徨い歩く。『老松鸚鵡図』の鸚鵡のように。
瞬間の中に、永遠の今、生命の宇宙と個の宇宙の融一。戦国武将の競争世界を生きてきた、旅する哲学者。陥れる策略、謀反、嫉妬、詐欺、詭計、殺意うずまく階級社会、生き残りをかけて戦い敗れた日々。蘇る哲学者。
愚者よ、外見で無用と決める愚かさに気づけ。「大盈若沖、其用不窮」『老子』。恨血千年土中碧、恨みの血は千年地中に凝結し碧玉となる。花ゆらゆら夕べに散る。森の残照。
見果てぬ夢を見る人は、どのように希望をつなぐのか。「千載具眼の徒を竢つ」(若冲)。千年の後、具眼の士が現われるのを待つ。と絵師はいう。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
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若冲は35歳の時、相国寺にて、僧、大典顕常(1719年—1801年)に出会う。売茶翁(1675年—1763年)とも出会う。若冲という名を得て、若冲『動植綵絵』を10年の歳月をかけて完成する(宝暦7年頃1757年から明和3年1766年)。人知れず隠れて、寺院の秘密の部屋で超絶技巧を磨き貫き、技を駆使して、革新的技法、創造的芸術を探求した。裏彩色、色彩の魔術師。8万6千の方眼の中に描かれている極彩色の屏風、『鳥獣花木図屏風』。枡目描きは、西陣織物商、金田忠兵衛がいた。
若冲の超絶技巧の超細密画、微細な生きものの神秘な世界。マクロコスモスとミクロコスモスの調和、宇宙と小宇宙の融一を観照する。寺院の秘密の部屋。
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
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永遠を旅する哲学者は、千年後に具眼の士が現われるのを待つ。旅する哲学者は、瞬間の永遠、永遠の今のなかに、美と真理を探求する。美は真であり、真は美である。詩人の魂は、怨みにある。李白の美の源泉は、恨みである。
若冲が『動植綵絵』で追求したものは何か。作品を評価してくれる人が現れるまで千年待つ。天上の宇宙と心の中の宇宙。天上の宇宙と心の中の宇宙。若冲は、生きものの神秘と美に魅入られたのか。若冲の絵画『動植綵絵』の方法とは何か。「内容なき思考は空虚であり、概念なき直観は盲目である」「いかに感嘆しても感嘆しきれぬものは、わが天上の星の輝きと我が心の内なる道徳律」。内なる宇宙は、何を志向したのか。
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』より
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伊藤若冲、謎の生涯
伊藤源右衛門(若冲)(1716-1800)、京都の富裕な青物問屋に生まれ23歳で家業を継ぎながら、40歳で次弟に家督を譲り、異常に緻密な細密画に生涯没頭したのはなぜか。84歳まで、絵画を追求した若冲。相国寺、大典に出会い、人生が一変する。師なき領域で独創的藝術を探求した。
南蘋派の絵師、鶴亭に影響を受けて1000点に及ぶ中国絵画の臨写(模写)をするが、模写を止め独創性を追求する。「旭日鳳凰図」(1755)から始まる創造的藝術の探求。
若冲は10年の歳月をかけて『動植綵絵』『釈迦三尊像』『釈迦三尊像』を描き、京都、相国寺に寄進した。
*『動植綵絵』「群鶏図」「老松孔雀図」「老松鳳凰図」「牡丹小禽図」「雪中錦鶏図」「芍薬群蝶図」、鳥、植物、微細な生きものの輝く宇宙。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
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★主要作品
『動植綵絵』全30幅(宮内庁三の丸尚蔵館所蔵)、『釈迦三尊像』3幅、相国寺。(宝暦7年頃1757年から明和3年1766年)
伊藤若冲『象と鯨図屏風』紙本墨画 六曲一双 寛政9年(1797年)MIHO MUSEUM
大阪西福寺蔵『仙人掌群鶏図襖絵』(重要文化財)。金地の襖の上に描かれた鶏とサボテンの極彩色の美。「若冲の鶏」。
『菜蟲譜』(佐野市立吉澤記念美術館)。青物問屋の長男として生まれた若冲の動植物への愛情があふれ出ている作品。横10メートル以上に及ぶ作品の中に98種類の野菜、果物、そして56種類の昆虫が描かれている。若冲の画力とユーモア。
『百犬図』(個人蔵)、縦1.4メートルの大画面に、様々な表情と容姿の犬が描き込まれた。
重要文化財『葡萄小禽図襖絵』『松鶴図襖絵』(金閣鹿苑寺)、重要文化財『蓮池図』(西福寺)。
『鳥獣花木図屏風』(18世紀、プライス・コレクション) *日本美術史上、最も謎に満ちた作品*
参考文献
*狩野博幸『その絵師、若冲なり』2016、辻惟雄『奇想の系譜』1970
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★3点の若冲屏風に作者帰属問題がある。*『白象群獣図』( 1772-87年個人蔵)、*『樹花鳥獣図屏風』(18世紀、六曲一双・紙本著色、各137.5×355.6cm)静岡県立美術館
*佐藤康宏(東京大学教授)は「樹花鳥獣図屏風」を「工房作」、「鳥獣花木図屏風」を「作者不明の模倣作」と指摘した。若冲作とされる桝目描きの作品は、ほかに「白象群獣図」がある。白象は若冲作とした。*(佐藤康宏「若冲・蕭白とそうでないもの」『美術史論叢』2010東京大学)
*「若冲屏風」は本人の作? 朝日新聞2010/05/01
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★ これまでの若冲展
*没後200年「若冲展」京都国立博物館、平成12年(2000)
*「若冲ワンダーワールド」、MIHO MUSEUM、2009年9月1日(火)~ 12月13日(日)
*プライスコレクション 若冲と江戸絵画、東京国立博物館、2006年7月4日(火) ~ 2006年8月27日(日)、
*愛知県美術館、2007年4月13日(金)~ 6月10日(日)
*伊藤若冲アナザーワールド、千葉市美術館、2010年5月22日(土) ~ 6月27日(日)
*「皇室の名宝 日本美の華」、若冲『動植綵絵』、東京国立博物館、2009年10月6日~11月3日
*「若冲展」、相国寺承天閣美術館、2007年5月13日-6月3日
*「Kawaii 日本美術」山種美術館、伊藤若冲《樹花鳥獣図屏風》(静岡県立美術館)、2014年2月4日(金)~3月2日(日)
*「若冲と蕪村」生誕三百年同い年の天才絵師、サントリー美術館、2015年3月18日(水)~5月10日(日)「象と鯨図屏風」伊藤若冲筆 六曲一双、右隻左隻寛政9年(1797) MIHO MUSEUM蔵、「白象群獣図」個人蔵
*わが名は鶴亭―若冲、大雅も憧れた花鳥画、神戸市美術館
「桐に鳳凰図」鶴亭筆 宝暦3年(1753年)個人蔵
2016年4月9日(土)~5月29日(日)
http://www.city.kobe.lg.jp/culture/culture/institution/museum/main.html
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若冲展 生誕300年記念、東京都美術館
2016年4月22日(金)~5月24日(火)
http://www.tobikan.jp/

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