大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第394回
「異端の奇才——ビアズリー」が、三菱一号館美術館で開催されている。異例の予約チケット完売。ラファエロ前派、唯美主義、ロセッティを超える空前の人気である。その魅力の秘密は何か。ビアズリーの魅力は、運命の女(ファム・ファタル)の図像学、洗礼者ヨハネの図像学である。ビアズリーの生涯と作品から考察する。
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第392回
リアス式海岸の断崖と入り江の港町を数々越えて、ダリのポルト・リガトの岬町へ。
横須賀美術館、観音崎へ。横浜から京浜急行線特急で堀ノ内乗り換え、馬堀海岸からバスで、観音崎へ行く。
魔術的写実主義、サルバドール・ダリ、魔術的写実主義、サルバドール・ダリ。
【シュルレアリスムの図像学】デ・キリコ「ある秋の午後の謎」1910「通りの神秘と憂鬱」「イタリア広場」(1914年)、ダリ『記憶の固執』1931、ポール・デルヴォー「眠れるヴィーナス」1944、『記憶の固執の崩壊』1954、ルネ・マグリット『大家族』1963、ルイーズ・ブルジョワ『ママン』1999・2002
【シュルレアリスム100年】『シュルレアリスム宣言 溶ける魚』アンドレ・ブルトン1924から始まる。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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魔術的写実主義、サルバドール・ダリSalvador Dali(1904-89)の生涯と藝術
サルバドール・ダリ(1904-89)の生涯
【サルヴァドール・ダリSalvador Dali 生涯】
ダリは1904年5月11日、スペインのカタルーニャ地方フィゲーラスで生まれる。1922年、マドリードのサンフェルナンド美術学校に入学、詩人フェデリコ・ガルシーア・ロルカ、映画監督ルイス・ブニュエルと知り合う。1929年、パリに赴き、ルイ・アラゴン、アンドレ・ブルトンら、シュルレアリスムの中心人物たちと面識を得る。1931年27歳の時、『記憶の固執』を描き、生涯の最高傑作となる。1929年夏、ポール・エリュアールが妻とともにカダケスのダリのアトリエを訪ねた。ダリの妻となるガラ・エリュアールとの出会いである。ダリとガラは強く惹かれ合い1934年に結婚。1982年にガラが死去。「自分の人生の舵を失った」。ジローナのプボル城に引き籠もった。1983年5月を最後に絵画制作を止める。
【ダリ、シュルレアリスムとの出会い】シュルレアリスムの代表的なアーティスト、絶大な人気を誇るサルバドール・ダリ。スペイン・フィゲラス出身のダリは1929年パリでミロの紹介でアンドレ・ブルトンに会い、29年夏カダケスにシュールレアリストたちポール・エリュアール夫妻、ルネ・マグリット夫妻の訪問を受ける。1934年アンドレ・ブルトンと離れる。1934年ガラと入籍、アメリカで見聞を広げ、39年ニューヨーク万博でパビリオン展示。人生の後半は生まれ故郷で愛妻のガラとともに多数の作品を制作した。
【ダリとガラ、ガラは雌カマキリ】ダリとガラは強く惹かれ合い1934年に結婚。1982年にガラが死去。「自分の人生の舵を失った」。ジローナのプボル城に引き籠もった。ダリ『ロートレアモンのカマキリの人肉食』1934。
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サルバドール・ダリ(1904-89)の藝術
魔術的写実主義【サルバドール・ダリ(1904-89)】『記憶の固執』1931、『ロートレアモンのカマキリの人肉食』1934、『ゆでたインゲン豆のある柔らかい構造(内乱の予感)』1936『ナルシスの変貌』37『燃えるキリン』37『ヴィーナスの夢』1939『聖アントニウスの誘惑』46『ビキニの3つのスフィンクス』1947、『記憶の固執の崩壊』1954、「テトゥアンの大会戦」1962、『引き出しのあるミロのヴィーナス』1936『夜のメクラグモ 希望』40『焼いたベーコンのある自画像』41『象』1948『ポルト・リガトの聖母』1950『MeltingWatch溶けた時計』54、『大惨事シリーズ(Série des catastrophes)《ツバメの尾》』1979【初期ダリ】『窓辺の少女』1925『陰鬱な遊戯』29『不可視のライオン』1930『降りてくる夜の影』1931
ダリ『ロートレアモンのカマキリの人肉食』1934、大野方子(諸橋近代美術館学芸課長)に聞いたところ、この作品はアメリカにあるとのことである。
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【『記憶の固執』1931】
ダリのアトリエからみえるポルト・リガトの海と岩と柔らかい時計がある。ある日の午後、溶けた時計が見えた。「私は二つの柔らかい時計を見た。そのうちひとつはオリーヴの木の枝に嘆かわしい姿でぶらさがっていた。」ダリ『わが秘められた生涯』1942
【『ヴィーナスの夢』1939】
《ヴィーナスの夢》1939年ニューヨーク万博で制作したパビリオンの内壁を飾るために制作された代表作。パビリオンの正面にボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』1485の複製が展示されていた。柔らかい時計や燃えるキリン、引き出しのある人物、焼けたベーコンなどダリのシンボリック・イメージと言えるモチーフが集結、揃い踏みである。
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展示作品の一部
《ビキニの3つのスフィンクス》1947、公益財団法人諸橋近代美術館蔵
ダリ「ヴィーナスの夢」1939、(Salvador Dali、1904-1989『ヴィーナスの夢』(The Dream of Venus)広島県立美術館蔵
サルバドール・ダリ《ダンス:セブン・ライブリー・アーツより》1957 年頃、公益財団法人諸橋近代美術館蔵 Salvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR Tokyo, 2024 B0824
サルバドール・ダリ《アン・ウッドワードの肖像》1953年 公益財団法人諸橋近代美術館蔵 Salvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR Tokyo, 2024 B0802
フィリップ・ハルスマン 《サルバドール・ダリ》 1954年
Photo by Philippe Halsman Philippe Halsman Archive Image Rights of Salvador Dali reserved: Fundacio Gala-Salvador Dalí Figueres
シュルレアリスム宣言 100 年
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参考作品
ダリ『ロートレアモンのカマキリの人肉食』1934
ダリ「テトゥアンの大会戦」1962、諸橋近代美術館
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開催概要
サルバドール・ダリ(1904-89)の生誕 120 周年、シュルレアリスム宣言 100 年の記念すべき節目に開催する本展は、世界屈指のダリ・コレクションを形成する諸橋近代美術館の所蔵品を中心にダリの生涯を概観し、ダリの渡米以降の活動にも注目します。 ダリが私たち観衆に魅せた「シュルレアリスト・ダリ」とその背景にある「人間・ダリ」の複雑で繊細な内面を探り、世界中で愛されているサルバドール・ダリがいかなる芸術家であったのか、油彩、 素描、版画、彫刻のほか、ミロやマグリットなどシュルレアリスムの作家の作品群など約 120 点により明らかにいたします。
会場:横須賀美術館(神奈川県横須賀市鴨居4-1)
会期:2月8日(土)~4月6日(日)
講演会「天才サルバドール・ダリの秘密」大野方子(公益財団法人 諸橋近代美術館学芸課長)2025 年2月8日(土) 14:00~15:30(終了予定)
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参考文献
生誕100年記念 ダリ回顧展 Salvador Dalí Centennial Retrospective図録、朝日新聞社、上野の森美術館、2006
絶世の美女、憂愁の王妃、強欲な魔女、才色兼備の美女、ゾフィア・ドロテア、ガラ、クレオパトラ7世・・・美と復讐第3巻
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ダリ『記憶の固執』、『記憶の固執の崩壊』・・・スペインの荒涼とした大地、記憶の迷路
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シュルレアリスムの夢と美女、藝術家と運命の女
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デ・キリコ、形而上絵画の謎・・・形而上絵画と古典絵画を往還する
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生誕120 周年サルバドール・ダリ―天才の秘密―・・・魔術的写実主義、ヴィーナスの夢
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著者プロフィール 大久保正雄 哲学、美学、比較宗教学、図像学。美術評論。著書『ことばによる戦いの歴史としての哲学史』理想社。質疑応答、島薗進×大久保正雄『死生学 ファンタジーと魂の物語』2019、島薗進×大久保正雄『死生学 宗教の名著』2018、島薗進×大久保正雄『死生学 ファンタジーと宗教』2017.島薗進×大久保正雄『死生学 人の心の痛み』
「旧嵯峨御所大覚寺―百花繚乱 御所ゆかりの絵画」・・・嵯峨天皇と空海、運命の美女
大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第387回
藝術作品は、人の愛と苦悩のドラマの痕跡であり、時代の証言である。旅人はそこに魂の美を求める。大久保正雄
取材計画【アグリジェント、神殿の谷】コンコルディア神殿が聳える。最も完璧な神殿。古代ギリシアの詩人ピンダロスが「人の造りし最も美しき都市」と謳った都市。神殿の谷は、稜線に20の神殿が聳える。丘に神殿遺跡がそこここに残る古代都市遺産群を廻る、広大な地。憧れの古代都市。哲学者エンペドクレスが、生まれた地。
アクラガスは、ギリシア人の植民都市、前 580年頃ゲラの市民によって建設され、前6~5世紀僭主ファラリスやテロンのもとに繁栄した、アクロポリスの丘の上のアルカイック期神殿群の遺跡はこの時期に属し、180年栄えた。紀元前406年、カルタゴに滅ぼされた。カルタゴ軍が、シケリア西部のカルタゴ殖民都市に対する攻撃の報復として、【アクラガス包囲】ドーリア人都市であるアクラガス(アグリジェント)を包囲した。
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【時間論】3つの世界観の時間論。時間には、回帰的時間と終末観的時間と進化的時間がある。(渡辺慧『時』第3章、時間の起源と機能)(回帰的時間は、エンペドクレス、ニーチェ『ツァラトゥストラ』。終末観的時間はキリスト教。進化的時間は、ベルクソン『創造的進化』)。あなたはどの世界観を選ぶのか。
*ベルクソン1974、初刊1948年。*エンペドクレスの宇宙円環(Cosmic Cycle)、ヘラクレイトスの回帰的宇宙、ニーチェの永劫回帰(Ewig Wiederkehren)、ピュタゴラスの輪廻転生。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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1、美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。美しい魂は、輝く天の仕事をなし遂げる。美しい女神が舞い下りる。美しい守護精霊が、あなたを救う。永遠を旅する哲学者は、時を超えて、理念を追求する。美のイデアへの旅。
2、
【理念と現実の一致】思想家は、理念を現実において成就することを追求する。プラトン哲学は、国家において知恵が実現することを追求する。空海は、即身成仏を追求する。
3、
【空海、悪霊調伏】不空『理趣釈経』【『般若理趣経』第三段】「金剛手よ、もしこの理趣を聞きて受持し読誦することあらば、たとひ三界の一切の有情を害すも悪趣に堕せず」天人は三悪趣*と戦う。(地獄・餓鬼・畜生)【空海、聖なるものは悪を滅ぼす】空海は三界の衆生を害することとは三界の無明を断じることに他ならないとしている。*三毒。貪欲・瞋恚・愚痴。貪瞋痴。
4、
【愛と復讐の叙事詩】アレクサンドロス大王、父フィリッポス2世を暗殺。クレオパトラ7世、弟プトレマイオス14世を暗殺。プロイセンのフリードリッヒ大王、織田信長、偉大な人生は、復讐から始まる。絶望に立ち向かう。絶望を超えて、復讐を果たし、天の仕事を成し遂げる。
【偉大なる王の死】アレクサンドロス3世、33歳。ダレイオス1世66歳。ダレイオス3世60歳。ラムセス2世92歳、子供100人を残す。ハトシャプスト女王49歳。アクエンアテ ン王29歳。ツタンカーメン18歳。アンケセナーメン27歳。美しきネフェルティティ63歳。絶対権力者が手に入れられない4つの秘宝がある。
5、
【理念を追求する精神】理念を探求する人は、邪知暴虐な権力と戦い、この世の闇の彼方に理想と美を求める。輝く天の仕事を成し遂げる。空海、孔子、織田信長、李白、プラトン。即身成仏、忠恕、仁義礼智信、武の七徳、桃花流水杳然去、美の海の彼方の美のイデア、存在の彼方の善のイデア。
【理念を追求する精神】空海は理念を探求して旅した。空海の24歳の苦悩は『聾瞽指帰』に刻まれている。空海、ロレンツォ・デ・メディチ、プラトン、玄奘三蔵、李白、王羲之、嵯峨天皇、ソクラテス、理念に向かって、旅した人。理念を追求する人は、この世の闇の彼方に美を求める。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
【理念を探求する精神、美と復讐の精神史】ソクラテス、紀元前399年70歳。プラトン紀元前347年74歳。空海835年61歳。李白 762年61歳。孔子紀元前479年74歳。織田信長1582年49歳。アレクサンドロス大王紀元前323年33歳。嵯峨天皇842年56歳
【思想家、藝術家、運命との戦い】ソクラテス、紀元前399年70歳。プラトン紀元前347年74歳。アリストテレス紀元前322年62歳。孔子紀元前479年74歳。空海835年61歳。藤原定家1241年79歳。李白 762年61歳。北斎1849年90歳。
6、
【東西文化交渉史】ミケーネ文明、ミノア文明とトロイア文明を滅ぼす。ギリシア美術、紀元前5-4世紀、最盛期、BC334アレクサンドロス大王の遠征、ペルシア帝国征服、インド遠征、ガンダーラ美術、ペルガモン王国誕生、シルクロード経由、7世紀北魏南梁から飛鳥彫刻、8世紀天平彫刻、9世紀、弘仁貞観、密教美術、12世紀、運慶彫刻
7、
【六道輪廻と六観音菩薩】如意輪観音菩薩、天道の天人を救う。聖観音菩薩、地獄道の者を救う。千手観音菩薩、飢えと渇きの餓鬼道の者を救う。馬頭観音菩薩、動物の弱肉強食の畜生道の者を救う。十一面観音菩薩、怒りと争いの修羅道の者を救う。准胝観音菩薩(不空羂索観音菩薩)、人道の者を救う。
8、
【人生の舞台、16の性格】外交官グループ、提唱者、仲介者、主唱者、広報運動家。番人グループ、管理者、擁護者、幹部、領事官。探検隊グループ、巨匠、冒険家、起業家、エンターテイナー。分析家グループ、建築家、論理学者、指揮官、討論者。人生の舞台、必殺技をどう披露するか。卓越した技、強み弱み、どう発揮する。織田信長は、明晰透徹な指揮官、武の七徳を探求する。
9,
愛と智慧と慈悲の高みに到着する。藝術家と思想家の運命との戦い。大久保正雄『旅する哲学者、美への旅』
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【フランソワ・ジェラール『アモルとプシュケ』1798年】
プシュケはある王国の三女であったが 、プシュケはあまりの美貌ゆえに求婚するものが現れず、神託により人身御供に捧げられた。ヴィーナスが美しさに嫉妬して遣わした息子アモルは見惚れる。自分の矢で傷つき、アモルによって天上の宮殿に略奪された。アモル を見ることを禁じられたプシュケは、アモルの姿をある夜、見てしまい、アモルを探し求めて世界中を彷徨う。ヴィーナスに4つの苦難を与えられたプシュケ。
【最後の難題は、冥界の女王ペルセポネから、美の函を地獄から持ち帰ること】プシュケはほとんど地上まで持ち帰るが、好奇心に勝てず、開けてしまう。しかしその函には、美のかわりに深い眠りが入っていて、プシュケは深い眠りにつく。プシュケは第4の苦難を解き、他方、アモルはプシュケを探している。眠っているプシュケを見つけ、その矢でついて目覚めさせる。プシュケは、アモルと天上界で結ばれる。
ルーヴル美術館、愛を描く・・・愛の絵画、愛と美の迷宮
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参考文献
大久保正雄「ルネサンス、メディチ家と織田信長」
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織田信長、天の理念のための戦い。徳姫の戦い・・・愛と美と復讐
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織田信長、理念を探求する精神・・・美と復讐
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旅する思想家、孔子、王羲之、空海と嵯峨天皇
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密教経典『理趣経』・・・空海と金剛界曼荼羅
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旅する哲学者、ソクラテスの戦い ソクラテスの祈り
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理念を探求する精神・・・ギリシアの理想、知恵、勇気、節制、正義、美と復讐
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大久保 正雄『ことばによる戦いの歴史としての哲学史 理性の微笑み』 理想社
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宗教の謎、国家と宗教の戦い、第2巻、アカデメイア、ルネサンス、織田信長
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ツタンカーメン発掘100年・・・古代エジプトの王と王妃と女王
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2023年、美術展ベスト10・・・旅する哲学者、美への旅
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新古典主義、ダヴィッドと弟子たち・・・「ソクラテスの死」「アモルとプシュケ」
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★★★
仏教史、哲学史
仏教2500年の旅 仏陀入滅、アレクサンドロス大王、瑜伽行唯識学派、密教
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運慶の旅、金剛界、大日如来・・・東寺講堂、円城寺、光得寺、彼方へ
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プラトン哲学の戦い アカデメイア派対ペリパトス派、ローマ帝国、普遍論争、ルネサンス、フランス革命
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2024美術展ベスト10・・・旅する哲学者、美への旅
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2025 長楽万年 蘇る不滅の精神 美への旅
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